2019年04月16日

過重労働と心の病 労災申請

昨日15日は、心の病の相談者の労災申請書への医師の証明をもらうために、通院に同行しました。
労災申請のための、相談者の主治医との面談はもう何度実施したでしょうか。心の病の場合、お医者さんが労災申請に協力してくれないことがよくあります。20数年まえは、心の病が労働災害だということを知らないお医者さんが多かったので、時が経てば事態は好転すると思っていたのですが、ちっとも良くなりません。

今回もとても悪い予感はありました。完全予約制で、持ち時間が限られていたからです。
不安は的中。一番恐れていた、ひどい断られ方を最初されました。医師は「労災じゃないって言ってるじゃないか」と強い口調で言ったのです。病気の彼女は泣き出しました。
 医師に話を聞くと発症時の出来事を誤解していました。誤解を指摘し、再度カンファレンス会議にかけてもらうことになり、再検討してもらえることになりましたが、それにしても、「そんな言い方、病気の人にしないでください」と医師に言ってしまうところでした。

紺屋の白袴みたいな話ですが、心の病のお医者さんにも余裕が無いのでは無いかと思いを馳せます。

話をしているうちに、最後にお医者さんが「労災の考え方も病院によって異なるので、うちでダメだったら紹介状を書きますね」と言われた時に、30年も昔の記憶が蘇りました。某大学病院に腰痛で入院していた時、労災申請をすると言ったら転医を勧められ、退院になったこと。その時のお医者さんが「労災申請なんかしたから、揉め事に巻き込まれるのはごめんだから、退院して」と言ったこと。
もしかしたら、ここも、めんどくさいのかもしれません。
ただでさえ忙しいのに、労災申請されると、意見書をまとめないといけない、意見書出しても労働基準監督署で却下されるかもしれない。医師にとって、労働災害のハードルが高いことはよくわかります。

でもね、これは巡り巡ってなんですよ。
労働災害にあって困っている患者さんに手を差し伸べることができないほど多忙になったら、次に心のバランスを崩してしまうのはお医者さん自身。

個人の力でどうにもならないのかもしれませんが、手を差し伸べることができる余裕は、自分の心と体のために必要不可欠なことだと、みんなの力で求めていきましょう。助け合えれば乗り越えられるハードルだと思います。
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2019年04月08日

これはうつになるようなパワハラ、これは労働災害。

国立市に所在する美容皮フ科で起きたパワーハラスメント事件の団体交渉を2017年11月に開始しました。当該の看護師さんはハラスメントの結果心の病(自律神経失調症)に罹患し、休業を余儀なくされました中での、団体交渉の開始でした。2回の団体交渉が年内に実施され、当初の対応が良かったので早期解決か?と期待しましたが、その後第2回団体交渉での約束事項が次々反故にされ、結果として昨年2018年に東京都労働委員会に不当労働行為で申立に至りました。

申立書は不当労働行為事件に絞って記載したのですが、公益委員から団体交渉議題であるパワーハラスメントについても詳細を準備書面に記載して提出するように求められ、今回パワーハラスメントの経過をまとめました。

わかりやすいパワーハラスメントですし、厚生労働省のパワーハラスメントの指針と労災の指針に照らせ合わせれば問題なく書けるだろうと当初、思っていました。

ところが、辛かったです。書く内容は決まっているのに、辛いのです。書き終わって、お風呂に入っていたら悲しくて涙が出てくる感じ。気持ちがドヨーンと落ち込んでいく感じ。書いている途中でも感じていた、ものすごい疲労感が襲ってきました。私、どうしちゃったのかな?と考えてみるに、これは「うつ」症状です。思い当たる節は、今回書いた準備書面です。当該のHさんが受けたハラスメントの証拠は彼女と会社側のLINEのやりとりです。そのLINEを画面撮りし、証拠にし、その内容を時系列を追いながら書き写して整理しました。この作業で、すっかりパワハラの言葉の数々が、「書く」という行為を通じて私の心に刺さってしまったのです。

リアルタイムでも無い、本人でも無い、第3者の私でも出来事と「言われたこと」を書き写しただけで心が暗くなってきたのです。直接そんな言葉をLINEで送信され続けた彼女は本当に辛かったのだと身を以て実感してしまいました。

私は人の感情が入り込みやすい体質らしく、1日に3人程の「心の病」労働相談ですぐにダメージが出る体質です。それでもというか、だからこそというか、相談を受けたり、今回のように経過を記載したりして自分がダメージを受けて「うつ」症状が出るような話は、実際にそこに「パワハラ」が存在し、「労働災害」たり得るものであると確認出来ます。
その上で、私の体質的確信を、厚生労働省の指針という物差しを使ってわかりやすく伝えるのが私の仕事。

今回も「うつ」症状はきつかったですが、指針の物差しに当てはめ、準備書面が無事校了し、都労委と会社側に送信したので、今日はもう気分はスッキリしています。

「心が沈んで辛い」「常に悲しくてたまらない」「体を持て余すほど疲れ切っている」などの「うつ」症状があった時、思い当たるハラスメントが存在していたら、まずは誰かに話してみてください。そうすると、相当因果関係があるかどうか、はきりすることがあるかもしれません。

もちろん、私たちの組合でもいるでも、welcomeですよ。
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2019年03月29日

「労働組合の存在する」職場と「労働組合の無い」職場との常識の違い

3月もいよいよ終わりです。来週からは4月。新しくたくさんの若い人たちが働き始めます。「働くこと」が辛いことにならないように、「働くこと」が楽しいことになるように、私たちは力を出し合っていきたいと思います。

 新しく「働く」時に見る書類の一つで有る「求人票」に労働組合は「有る」と書いてありましたか?「無い」と書いてありましたか?
 新聞折込チラシとかインターネットサイトの求人募集要領には労働組合の有無の記載が無いものが多くありますが、ハローワークで発行する「求人票」には労働組合の有無について書く欄があります。それは、労働組合が有るか無いか、ということが労働条件の大きな違いになるからです。

 結論から言うと、労働組合が「有る」職場の方が労働組合の「無い」職場よりも労働条件は基本的に「良い」です。
と言うのは、労使の話し合いによってボーナス支給額、賃上げ額、労働条件の変更について決めることが、労働組合の存在する会社におけるルールだからです。

 労働組合が「無い」会社では、「社長の胸先三寸」で全てが決まってしまうことがよくあります。
 そうするとどうなるかと言うと、「俺(社長)が気に入らないことを言ったから、ボーナス下げる」とか、「上司が嫌いだと言っているから、ボーナス低く抑える」とか、精神的にも金銭的にも辛い事が起きてしまいます。

 実はそんな労働組合の無い別々の2つの会社で嫌な目にあった方達の件で、昨年から今年にかけて続けて2件の労働委員会申立をしました。業種も職種も全く異なる会社です。当事者も、職種も性別も勤続年数も全く違う人たちです。共通点は皆、元々が労働組合の無い職場だという事です。
 
 彼らの労働組合が無い職場で、ボーナス支給を巡って何が起きたか。
Aさんは5年程前に社員旅行に行かなかった事でボーナス30万円支給が半額になり、その後ずっと半減されたボーナス支給が続きました。昨年私たちの組合で交渉して、5万円UPで妥結しましたが、会社が妥結の意味を理解していません。妥結の意味を知ってもらうために、労働委員会に申し立てをしました。

Bさんは会社のパワハラによって心の病になり、2017年11月に休業したところ2017年冬季一時金の支給額が、例年の4分の1程でした。にも関わらず、支給明細も支給根拠の説明をありませんでした。労働委員会申し立て後、2019年3月になりし2017年冬季一時金の支給明細が初めて示されました。そして就業規則に記載された算定対象期間が6月から11月で有るにも関わらず「12月以降退職する可能性があるから」減額したと説明されました。このような不合理な理由での減額に対し、次回団体交渉で理事長から説明をしてもらうことになりました。

ボーナスの支給一つとっても、支給の方法自体がハラスメントになるようなやり方が起きてしまう事があります。
労働組合の有る、無しが、重要な労働条件で有る理由です。
そして、私たち労働組合のお仕事は、労働組合がなかった会社で、労使交渉をして、労使で合意して、労働条件を決めるという手続きを多くの会社に知ってもらうことでもあります。

納得のいかない、ボーナス支給や労働条件があったら、相談にいらしてください。



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2019年03月25日

解雇無効時の金銭救済制度は要らない。

厚生労働省の労働政策審議会ですでに6回も「解雇無効時の金銭救済制度」https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000211235_00005.html なるものが討議されています。資料を読んでみると、対象となる解雇は「解雇権濫用に該当する解雇、禁止解雇、就業規則・労働協約に定める解雇事由に基づかない解雇、有期労働契約期間 中のやむを得ない事由がない解雇、有期労働契約に係る雇止 め法理に反する雇止め」という、いわゆる不当解雇そのものです。産前産後とか、労災の休業中とかの法律で禁止されている解雇についても、裁判や労働審判で「解雇無効」と判断された時に「労働契約解消金」を払って解雇していいよという法律を作ろうとしています。

一体誰が、こんな法律が必要だというのでしょう。
今現在は、不当解雇があって、裁判に提訴して、解雇無効の勝利命令を得るとバックペイという「解雇されなければ得ていた賃金相当額」と将来に渡って「賃金を払い続けること」という命令が出されます。命令を受けて、会社と交渉して職場復帰の条件を整えるのが労働組合のお仕事の一つです。命令の前に、「和解」で「金銭解決」ということもあります。

つまり、現状、労働者には職場復帰という方法も金銭解決という方法もありますから、「労働契約解消金」が労働者を救済するというものではない事がよくわかります。
では一体、誰を救済??となると、違法な解雇を強行する経営者を救済する以外に考えようがありません。
何と言っても、どんな不当解雇でも、しかも長い長い訴訟で争った後に「労働契約解消金」を払って解雇を無かったことにしてしまえるのですし、払ってしまえば職場に戻す必要も、給料を払い続ける必要も無くなってしまうのですから、労働者の使い捨てやり放題です。

しかも、資料を読むと「労働契約解消金」の算定根拠に「企業規模」を加えるとか、不当性の高い典型的な類型解雇でも増額しないとか、「事前の集団的合意によって企業独自の算定基礎を入れる」とか、とんでも無い事ばかり書いてあります。企業規模を算定根拠にすれば、ブラック企業率が高い中小企業に働いているというだけで安く使い捨てられてしまいますし、不当性の高い解雇でも増額しないということは今では発生率が少なくなっている労災や産前産後とかの人道上も大いに問題の大きな解雇もやり放題です。しかも、「事前の集団的合意」となると、第2労務部とも言える御用組合を作ったり企業の意のままの従業員代表を使って「集団的合意」に持ち込んでしまえばその金額すらもやりたい放題です。

読めば読むほど暗澹たる思いにとらわれるこの制度設計。こんな変な法律を作らせること自体、やめにしましょう。
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2019年03月06日

「雇用類似の働き方」のセーフティネットに「下請法」「建設業法」はどこまで使えるのか

日本には現在1000万人あまりのフリーランスがいると言われており、それは国内労働力人口の約6分の1(フリーランス白書2018より)です。フリーランス、言い換えれば「個人事業主」「個人請負」「個人委託業者」として働いている人たちです。
経済産業省が言うところの「雇用関係によらない働き方」であり、厚生労働省の言うところの「雇用類似の働き方」をしている人たちです。政府が推進している「柔軟な働き方」の一つでもあります。

労働組合的観点から言うと、このフリーランス、柔軟な働き方をしている人たちの多くの実態を掘り下げていくと、実態状の労働基準法上の労働者であったり、労働組合法上の労働者であったりする事になります。

私たちの組合でも「契約上は労働者でない」方たちが増え、労働委員会などで争っています。
「雇用類似の働き方」をさせる事で「社会保険に加入しなくてもいい」「労働保険に加入しなくてもいい」「解雇責任を問われない」「労働基準法を守らなくてもいい」と言ううまみに味をしめた経営者が、実態上の労働者であることを認めたくないので争いになっています。

会社が「労働者でない」と言い張るのに対し、では「下請法」はちゃんと守っているかどうかを確認すると、これもまた守っていないのが実態です。つまり、対等な会社同士の商取引をせずに、「雇用類似の働き方」をさせて、支配下に置くと言うやり方をしているのです。

このやり方に対し、私たち組合は労働基準監督署、労働委員会という労働法分野においての声を今まで上げてきました。

そして、今回、逆アプローチで、「下請法違反の事実」を浮かび上がらせようと考えました。
今回、まず最初に手をつけようとしているのは株式会社キツタカの違反問題です。株式会社キツタカは賃貸借不動産物件の畳襖のリフォームをしています。内装業の建設業です。建設業としての東京都許認可番号を持っています。

違反事項を記載した申告書、証拠書類を揃え終わったので、昨日建設業法の監督官庁である国土交通省に電話を入れました。すると東京都の許認可番号があるので東京都建設局に行くようにと言われ、担当部署と電話番号を教えてくれました。東京都建設局の担当部署に電話を入れてアポどりをしましたが、これが結構手間取りました。

思うに、慣れていない??
労働基準監督署や労働委員会みたいに、アポなしで窓口に行って相談する体制ができていないと言うことのようなのです。
建設業法には、社会保険に加入できる請負賃でなければならないとか、著しく安い請負賃はダメだとか、書いてあります。建設業における請負のガイドラインでは、下請けのために親会社を指導してくれると言う箇所がたくさんあります。
内装も含めると、建設業に働く下請けさんはたくさんいるはずなのに、活用されていないとしたらとても残念なことです。

ただ、結論から言うと3月12日にアポイントを取ることが出来ました。

政府が「柔軟な働き方」をセーフティネットなく進めている中で、経済産業省管轄下の公正取引委員会による「下請法」、建築業における「建設業法」がどこまで請負さんを保護しているのかを確認していきたいと思います。

「請負」「委託」と言う契約名称で、親会社の都合よく働かせ、都合よく切り捨てる事にしっかりとNOと言うために、使えるものは全部使って、闘っていくしかありません。
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2019年03月04日

1990年の賃金水準は今や高賃金?

先週金曜日に、「最低賃金1500円に!」という学習会を開催しました。講師には、にいがた青年ユニオンの山崎さんをおよびしました。山崎さんは40歳前後の方です。
山崎さんが用意していただたレジュメに「クレヨンしんちゃんパパはセレブ?」という項目がありました。クレヨンしんちゃんパパの設定は「30代で専業主婦の妻がいて、子供が二人いて、車を持っていて、ローンで持ち家で、年収600万(年2回ボーナス)。」というもの。山崎さんの年代から見ると、この年収や家族構成は「セレブ」。今の30代や40代前半はもっと貧しい層がたくさんいて、これだけの年収を得られる人はごくわずかのエリート。
 でも、山崎さんよりもだいぶ年が上の私には、どうしてそういう設定なのかわかります。その設定は1980年代後半から1990年のバブル期からバブルがはじけたばかりの時代の平均的なサラリーマン家庭なんです。派遣法は成立したけれど、ほとんどの労働者が正社員だった時代。正社員のお給料が年功序列だった時代。ボーナスが当たり前にあって、退職金が当たり前にあった時代。労働組合が春闘を当たり前にやっていた時代。労働基準法ギリギリとか、最低賃金ギリギリとかがブラックな会社だった時代。
 1980年代の標準は、2020年にさしかかろうという今、セレブ。
 いやはや、なんでこんなに労働者の賃金は値崩れしてしまったんでしょう。

翌日の土曜日、青伸グループ分会という2000年に結成された分会の団体交渉がありました。
会社側の提案する新賃金体系とこの間の諸問題を一気解決するための、賃金組み立て交渉がメーンです。
会社側案に対する組合案を出して、今後さらに詰めることになりました。
交渉の流れは悪くないのですが、その時に、会社役員が一言言いました。
「他の従業員に比べて組合員のAさんとBさんだけが突出して賃金が高い」。それは逆にいうと、他の人が「安い」。
 この理由を私たち組合員は本当によく知っています。
 なぜかというと、組合を結成した2000年頃から運転労働者の賃金値崩れが社会的に発生したからです。組合はただ、定期昇給年500円を早々に妥結し、協定書化しただけです。つまり、現在「賃金が高い」と言われているAさんもBさんも2000年当時の賃金に500円×19年分が上積みされているだけなのですが、相対的にたの運転手さんの賃金が値崩れしたために「高い」と言われる結果になったに過ぎないのです。
 組合員のAさんとBさんの賃金が値崩れしなかったのは、組合に入って会社と交渉し、賃下げ提案を断ってきたからだけの事です。たまに労働委員会をやったり、たまに組合旗を出したりはしていますが、大きな争議や賃上げ闘争をしていなくてもこの結果。労働組合組合員で居続けた成果です。

私は、この役員の言葉を聞いた時、昨夜の「なんでこんな時代になってしまったのか」という疑問の謎が解けました。「労働組合の力」を労働者が使わなくなったからです。
労働組合に入っているだけで値崩れは防げるのに、入っていいなかったから、入らなかったからこんな時代になってしまっています。
今からでも遅くありません。労働組合に入って、値崩れ前の賃金水準、雇用不安のない雇われかた、そこにディンセントワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の付加価値をつけて、良い時代を作っていきましょう。


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2019年01月10日

嘘つき社会を変えるのは、働くみんなの力 ー勤労統計改ざんの労災保険休業補償に対する影響ー

あけましておめでとうございます。
 と言っても、年初めから権力者や国の嘘が続いてちっともおめでたくありません。私たち労働組合は、経営側の嘘に対して、「管轄省庁に訴える」ことで解決の糸口を探すことがあります。また、昨今の経営者や経営側弁護士の嘘の連発に首をひねり続けることもあります。経営者の中に「嘘をついても、騙し続けたほうが勝ち」という認識が流行っているのかと思ったら、政府官公庁にも「嘘つき」の病は蔓延しているのですね。
 とりわけ、本日報道された厚生労働省の勤労統計の15年に渡る改ざんは、データー改変ソフトまで作成していたという、計画的な「嘘」です。もはや犯罪レベルだと思うのですが、なんだってこんな国になってしまったんでしょうね。
 まず、セーフティネット利用者に対して軽く扱っていることに対する疑義が湧きます。労災給付や失業給付はセーフティネットです。職を失ったり、病気になったりしたときに、安心して次の仕事を探し、病気を治すために必要な保障です。そこには、雇用主の不法行為によって失職した時や病気になった時も含まれます。
 だからこそ、労働災害保険法施工規則第9条(給付基礎日額の特例)では四項で「前三号に定めるほか、平均賃金に相当する額を給付基礎日額とすることが適当でないと認められる場合には、厚生労働省労働基準局長が定める基準に従つて算定する額とする。」とされ、五項で「平均賃金に相当する額又は前各号に定めるところによつて算定された額(以下この号において「平均賃金相当額」という。)が四千百八十円(当該額が次項及び第三項の規定により変更されたときは、当該変更された額。以下「自動変更対象額」という。)に満たない場合には、自動変更対象額とする」と「自動変更対象額」が定められています。さらに、第2項で「厚生労働大臣は、年度(四月一日から翌年三月三十一日までをいう。以下同じ。)の平均給与額(厚生労働省において作成する毎月勤労統計(次条及び第九条の五において「毎月勤労統計」という。)における労働者一人当たりの毎月きまつて支給する給与の額(第九条の五において「平均定期給与額」という。)の四月分から翌年三月分までの各月分の合計額を十二で除して得た額をいう。以下この項において同じ。)が平成六年四月一日から始まる年度(この項及び次項の規定により自動変更対象額が変更されたときは、直近の当該変更がされた年度の前年度)の平均給与額を超え、又は下るに至つた場合においては、その上昇し、又は低下した比率に応じて、その翌年度の八月一日以後の自動変更対象額を変更しなければならない。」と定めているのです。

 どういうことかというと、通常は労災保険休業給付は、労災に罹病する3ヶ月前の平均賃金から算定されます。でも、平均賃金が計算できない場合、その金額が著しく安い場合、休業が長期に渡ると罹病前の平均賃金がその後の賃上げや賃下げとズレてくることがあります。それで、今回改ざんが明らかになった「毎月勤労統計」の平均給与額が給付に影響してくるのです。

 実際に、私が担当した事件では、雇用契約書の締結されていないアルバイトとして働いて2日目の職場が火災となり毛髪が全て焼けるような重度の火傷を負った労働者のケースでは、平均賃金が計算できませんでした。そのため、最初はこの法律で書かれているところの4180円の日額計算でしたが、その後自動変更対象額の変更で上積みされました。3年ほど受給していたケースでしたが、途中からの増額でなんとか一息つけた感じで、すごく喜んでいたのを今でも覚えています。

「毎月勤労統計」による金額の変動は、大変な状況にいる人ほど直接の影響が多きいものです。労働基準法、労働基準法施工規則、労働安全衛生法などを紐解いていくと、「厚生労働大臣が定める」と記載された金額の多いこと。

 数字の後ろに存在する多くの生活を考えたら、こんな改ざんは到底できようものではありません。
権力のある国、政府機関、経営者・・。「嘘をついて」も嘘をつき得にさせないため、こんな社会を変えましょう!
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2018年12月06日

利用者の人権を守る為に、労働者の人権を尊重しよう

今日は日野市にある寿優和会という特別養護老人ホームを経営している社会福祉法人との団体交渉でした。ワーカーさんで働いているYさんが本意でない「退職届」に署名させられ、退職に追い込まれようとしている事件です。そして、「退職届を書かないと今日は帰らせない」「配置転換か退職かどちらかを選ばないといけない」「配置転換しても針のむしろ」「配置転換を断ると懲戒解雇になる」「懲戒解雇よりも自己都合退職がまし」と脅され、騙されて、退職届に署名させられた事件です。この時、「東京都」「日野市」から「求められて」いると施設長が言ったということでした。

ところが、本日の団体交渉では、法人側は「退職届を書けとは言っていない」と言いました。それならば、Yさんは働き続けたいのだから、退職届は「無かった」ことにして、勤務継続させれば良いのではないかと提案しました。しかし、法人側は退職は撤回できないと言いはります。

また、Yさんが書いた退職届に、Yさんは退職日を記載していません。
にも関わらず、法人は12月15日を退職日だとして強行しようとしています。
このことについて、退職日を決めていない退職届をもとに、12月15日を退職日としているのは解雇に他ならないと伝えると、なぜか、法人側代理人は「退職日が書いていない退職届でも12月15日退職で有効だ」と言いました。その理由を求めるとそれは「今は言えない」・・・・・。
なんなんでしょう!!

そして、団体交渉に必要な資料の提出回答も12月20日だと法人側は言います。
資料の提出を受けないまま、このままでは解雇が強行されてしまいそうです。

この法人のホームページの冒頭は「人権と個性を尊重し」と大きな文字が書いてあります。
利用者さんに向けられた言葉かもしれません。
けれども、従業員の人権を尊重しないことには、利用者さんの人権が尊重される介護が出来ようがありません。
退職の意思表示を尊重するというのは、働く現場における労働者の人権尊重の基本です。
退職する意思が無い労働者を、脅したり騙したりして退職届を出させ、民法に基づき意思表示の撤回の意思表示を労働者がしても、一旦手にした退職を強行することは、解雇よりも悪質な人権侵害です。
ぜひ、人権を大切にする社会福祉法人で、このような人権侵害を1日も早く無くしてほしいものだと思います。

私も含め、働くことと、両親家族の介護は繋がっていること。労働者が人権を侵害されている福祉現場がとても心配です。

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2018年12月04日

奥井組中労委和解しました

IMG_0015.jpg 本日、12月4日、中央労働委員会で係争していた奥井組事件が無事和解にこぎつけました。
そして、分会の和解はどこでもそうですけれど、終わりでなく始まりです。誠実な団体交渉の始まり、次のステップに進む始まり。新たな労使関係の始まり。様々な確執を超えて、良い関係を築けるようになっていきたいものです。

 この事件は、ホント、長かったです。
 2010年夏に分会を結成し、事故の連帯責任の廃止から始まり未払い残業代請求から差別のない賃金体系作りと進んで行ったのですが、2012年に2回目のデジタルタコメーターの改ざん問題が発生します。そのおり、和解のチャンスも訪れたのですが様々あって、2012年秋には労働委員会提訴と訴訟提訴となりました。
 訴訟は未払い残業代+同意のない賃金体系強制適用の差額支払い訴訟でした。これも色々ありましたが、2017年12月に無事和解解決し、納得のいく金額を支払ってもらうことができました。この訴訟解決が一山を超えた感でした。さらっと書いてしまうとこんな感じなのですが、詳しく書くと、もっと一般化されるような話です。

 そもそも、未払い残業代の発生は歩合給を支払っているから残業代の支払いが必要がないと会社が思い込んでいたことから始まりました。この近隣の会社では、同じような例が散見していましたから、近隣で同じようなレクチャーを受けて、でも法的には問題のあるやり方になっていたのでしょう。
 大型特殊車両の長距離運転手さんたちなので、日をまたいだ労働、長時間の荷待ち待機、長時間の荷積み、運行許可時間までの待機などが組み合わされ、会社に出勤してから、会社に戻るまで2週間もあったりして、労働時間管理は簡単でないことがわかりました。労働基準法的に整理すると同時に、労使間で話し合って労働時間と待機時間、休憩時間について整理していく必要のある労働実態です。
 会社に理解してもらうために長い時間を要しましたが、労働基準監督署の勧告もあり、2012年冬には賃金体系が変更になりました。この時、会社と組合は2013年2月までに賃金体系に合意するために事務折衝を重ね平等性のある賃金体系を作成しようという約束をしました。ところが、会社の事務折衝の担当者が言うことがなかなか確定しないなどの問題で2013年の夏がすぎ、秋が過ぎても新しい賃金体系が作れない中、会社が約束を反故にして非組合員らに残業代を支払って人件費が突出したので平等性のある賃金体系は作れない、と言い出しました。これは都労委で係争中に起きたことでしたが、追加申立を行い、不当労働行為であると認定され、2016年夏に東京都労働委員会から救済命令が出されました。

 都労委の救済命令が出された時、流石に会社も遵守するのではないかと思いました。しかし、会社は中労委に上告しそれから2年です。労使関係は生き物なので、申立時点で問題になっていた事のうち今でも継続していること、新しく発生したことが、都労委申立てから5年、都労委命令から2年、訴訟和解から1年の月日の中で変わってきています。そして、今まで5年間は労働委員会の期日が絶えずありましたから、期日のたびに労働委員会がこれ以上の労使紛争が拡大しないように、様々なアドバイスを出してくれていました。最初は、確か、団体交渉議事録確認についての調整でした。それまで団体交渉で言った言わないを巡って3回期日6時間ほど争いが続いていたのですが、労働委員会の中立でお互いの言い分記載して取り交わすことになりました。その後もことあるごとに労働委員会の方々にはお世話になってきました。

こんな経過の中で今回ようやく、和解です。和解勧告の内容は「当たり前」の事ばかりです。これに付け加え、公益委員から「日報改ざん、配車差別を含む差別などの組合が疑義に思っていることを会社は受け止めて対処するように」と言う一言が加えられ、後日「調書」として双方に送達されることになりました。

当該もこれを受けて、早速団体交渉申し入れを会社に行うと言っていました。

職場分会の和解はいつも終わりの始まりです。協定書を作成しても、ちゃんと会社が守ってくれないとまた、係争勃発します。それでもやっぱり、奥井組であれば分会結成の2010年の頃よりも法令を守る会社になってはいます。
次の団体交渉が楽しみです。
 

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2018年10月22日

八王子労働基準監督署にて

今日は、畳襖などの(株)キツタカの偽装請負問題で八王子労働基準監督署に行きました。申告した2月から延々と続いてます。この事件、申告時点で「請負」契約だからと最低賃金以下の労働を強いられていたのですが、なかなかキツタカへの指導が及びません。このため2月から10月にかけて、会社側は「請負」契約を幸いに、業務量を勝手に減少させたので、組合員らは兵糧攻めです。生活苦を抱えながら、「請負」契約という名前ではなく、実態で労働者性を判断してもらうために監督署を説得しなければなりません。困難ではありますが、今組合は半年以上かけて監督官に実態を理解してもらうための作業と交渉を続けています。もし、労働者が一人でこの作業をするとなったら、並大抵ではないはずです。国の役所で権力がある労働基準監督署が、弱い者の立場に立ってくれれば、こんな苦労をしなくても良いのですが。とっても残念なこの現状の中で、私たちは頑張っています。

実は、今日も、事前アポイントの様子を当該から聞き及び、ちょっとみんな憤慨していました。そんな気持ちを抱えたまま、監督官と話している時、私たちの後ろで別の人が別の監督官に怒りをぶつけていました。聞くともなく耳に入ってきた言葉は、「監督署に何度も訴えたのに、監督署が動いてくれなかったからこんな結果になってしまった」「会社が潰れたらどうするか、と言われても、こんな会社なら潰れたほうがいい」「この結果は監督署の責任だから、私は監督署相手に訴訟することも考えている」などなど。どうも私たち以上に監督署が仕事してくれずに、怒り心頭の様子。

そうだよなあ、と思いました。私たちは組合という組織を作って、監督署や会社からひどい対応があればその怒りを皆で共有し、対策を考えて、必要に応じて顧問弁護士とも相談して、関係する議員さんたちとも相談して、歩みを進めています。でも、お一人で、理不尽な事態に対応せざるを得ないときは、本当に辛いだろう思います。

労働局、労働基準監督署、こんな大事なお役所が労働者の立場に立って動いてもらうためには、やっぱり地域の労働組合の役割がとても大事です。それは、組合が様々な事案を持ち込み、解釈や対応についてきちんと監視するという役割も労働組合は担っていると思うからです。
世間では、たまに、「労働組合なんてあてにならない」という声がありますが、労働基準監督署交渉でも、訴訟でも、労働組合が果たす役割がきちんと存在します。一人で、交渉の行き詰まりを感じたら、思い切って地域の労働組合の相談窓口を尋ねて見ませんか?


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