今日は日野市にある寿優和会という特別養護老人ホームを経営している社会福祉法人との団体交渉でした。ワーカーさんで働いているYさんが本意でない「退職届」に署名させられ、退職に追い込まれようとしている事件です。そして、「退職届を書かないと今日は帰らせない」「配置転換か退職かどちらかを選ばないといけない」「配置転換しても針のむしろ」「配置転換を断ると懲戒解雇になる」「懲戒解雇よりも自己都合退職がまし」と脅され、騙されて、退職届に署名させられた事件です。この時、「東京都」「日野市」から「求められて」いると施設長が言ったということでした。
ところが、本日の団体交渉では、法人側は「退職届を書けとは言っていない」と言いました。それならば、Yさんは働き続けたいのだから、退職届は「無かった」ことにして、勤務継続させれば良いのではないかと提案しました。しかし、法人側は退職は撤回できないと言いはります。
また、Yさんが書いた退職届に、Yさんは退職日を記載していません。
にも関わらず、法人は12月15日を退職日だとして強行しようとしています。
このことについて、退職日を決めていない退職届をもとに、12月15日を退職日としているのは解雇に他ならないと伝えると、なぜか、法人側代理人は「退職日が書いていない退職届でも12月15日退職で有効だ」と言いました。その理由を求めるとそれは「今は言えない」・・・・・。
なんなんでしょう!!
そして、団体交渉に必要な資料の提出回答も12月20日だと法人側は言います。
資料の提出を受けないまま、このままでは解雇が強行されてしまいそうです。
この法人のホームページの冒頭は「人権と個性を尊重し」と大きな文字が書いてあります。
利用者さんに向けられた言葉かもしれません。
けれども、従業員の人権を尊重しないことには、利用者さんの人権が尊重される介護が出来ようがありません。
退職の意思表示を尊重するというのは、働く現場における労働者の人権尊重の基本です。
退職する意思が無い労働者を、脅したり騙したりして退職届を出させ、民法に基づき意思表示の撤回の意思表示を労働者がしても、一旦手にした退職を強行することは、解雇よりも悪質な人権侵害です。
ぜひ、人権を大切にする社会福祉法人で、このような人権侵害を1日も早く無くしてほしいものだと思います。
私も含め、働くことと、両親家族の介護は繋がっていること。労働者が人権を侵害されている福祉現場がとても心配です。
2018年12月06日
2018年12月04日
奥井組中労委和解しました

そして、分会の和解はどこでもそうですけれど、終わりでなく始まりです。誠実な団体交渉の始まり、次のステップに進む始まり。新たな労使関係の始まり。様々な確執を超えて、良い関係を築けるようになっていきたいものです。
この事件は、ホント、長かったです。
2010年夏に分会を結成し、事故の連帯責任の廃止から始まり未払い残業代請求から差別のない賃金体系作りと進んで行ったのですが、2012年に2回目のデジタルタコメーターの改ざん問題が発生します。そのおり、和解のチャンスも訪れたのですが様々あって、2012年秋には労働委員会提訴と訴訟提訴となりました。
訴訟は未払い残業代+同意のない賃金体系強制適用の差額支払い訴訟でした。これも色々ありましたが、2017年12月に無事和解解決し、納得のいく金額を支払ってもらうことができました。この訴訟解決が一山を超えた感でした。さらっと書いてしまうとこんな感じなのですが、詳しく書くと、もっと一般化されるような話です。
そもそも、未払い残業代の発生は歩合給を支払っているから残業代の支払いが必要がないと会社が思い込んでいたことから始まりました。この近隣の会社では、同じような例が散見していましたから、近隣で同じようなレクチャーを受けて、でも法的には問題のあるやり方になっていたのでしょう。
大型特殊車両の長距離運転手さんたちなので、日をまたいだ労働、長時間の荷待ち待機、長時間の荷積み、運行許可時間までの待機などが組み合わされ、会社に出勤してから、会社に戻るまで2週間もあったりして、労働時間管理は簡単でないことがわかりました。労働基準法的に整理すると同時に、労使間で話し合って労働時間と待機時間、休憩時間について整理していく必要のある労働実態です。
会社に理解してもらうために長い時間を要しましたが、労働基準監督署の勧告もあり、2012年冬には賃金体系が変更になりました。この時、会社と組合は2013年2月までに賃金体系に合意するために事務折衝を重ね平等性のある賃金体系を作成しようという約束をしました。ところが、会社の事務折衝の担当者が言うことがなかなか確定しないなどの問題で2013年の夏がすぎ、秋が過ぎても新しい賃金体系が作れない中、会社が約束を反故にして非組合員らに残業代を支払って人件費が突出したので平等性のある賃金体系は作れない、と言い出しました。これは都労委で係争中に起きたことでしたが、追加申立を行い、不当労働行為であると認定され、2016年夏に東京都労働委員会から救済命令が出されました。
都労委の救済命令が出された時、流石に会社も遵守するのではないかと思いました。しかし、会社は中労委に上告しそれから2年です。労使関係は生き物なので、申立時点で問題になっていた事のうち今でも継続していること、新しく発生したことが、都労委申立てから5年、都労委命令から2年、訴訟和解から1年の月日の中で変わってきています。そして、今まで5年間は労働委員会の期日が絶えずありましたから、期日のたびに労働委員会がこれ以上の労使紛争が拡大しないように、様々なアドバイスを出してくれていました。最初は、確か、団体交渉議事録確認についての調整でした。それまで団体交渉で言った言わないを巡って3回期日6時間ほど争いが続いていたのですが、労働委員会の中立でお互いの言い分記載して取り交わすことになりました。その後もことあるごとに労働委員会の方々にはお世話になってきました。
こんな経過の中で今回ようやく、和解です。和解勧告の内容は「当たり前」の事ばかりです。これに付け加え、公益委員から「日報改ざん、配車差別を含む差別などの組合が疑義に思っていることを会社は受け止めて対処するように」と言う一言が加えられ、後日「調書」として双方に送達されることになりました。
当該もこれを受けて、早速団体交渉申し入れを会社に行うと言っていました。
職場分会の和解はいつも終わりの始まりです。協定書を作成しても、ちゃんと会社が守ってくれないとまた、係争勃発します。それでもやっぱり、奥井組であれば分会結成の2010年の頃よりも法令を守る会社になってはいます。
次の団体交渉が楽しみです。