2019年01月10日

嘘つき社会を変えるのは、働くみんなの力 ー勤労統計改ざんの労災保険休業補償に対する影響ー

あけましておめでとうございます。
 と言っても、年初めから権力者や国の嘘が続いてちっともおめでたくありません。私たち労働組合は、経営側の嘘に対して、「管轄省庁に訴える」ことで解決の糸口を探すことがあります。また、昨今の経営者や経営側弁護士の嘘の連発に首をひねり続けることもあります。経営者の中に「嘘をついても、騙し続けたほうが勝ち」という認識が流行っているのかと思ったら、政府官公庁にも「嘘つき」の病は蔓延しているのですね。
 とりわけ、本日報道された厚生労働省の勤労統計の15年に渡る改ざんは、データー改変ソフトまで作成していたという、計画的な「嘘」です。もはや犯罪レベルだと思うのですが、なんだってこんな国になってしまったんでしょうね。
 まず、セーフティネット利用者に対して軽く扱っていることに対する疑義が湧きます。労災給付や失業給付はセーフティネットです。職を失ったり、病気になったりしたときに、安心して次の仕事を探し、病気を治すために必要な保障です。そこには、雇用主の不法行為によって失職した時や病気になった時も含まれます。
 だからこそ、労働災害保険法施工規則第9条(給付基礎日額の特例)では四項で「前三号に定めるほか、平均賃金に相当する額を給付基礎日額とすることが適当でないと認められる場合には、厚生労働省労働基準局長が定める基準に従つて算定する額とする。」とされ、五項で「平均賃金に相当する額又は前各号に定めるところによつて算定された額(以下この号において「平均賃金相当額」という。)が四千百八十円(当該額が次項及び第三項の規定により変更されたときは、当該変更された額。以下「自動変更対象額」という。)に満たない場合には、自動変更対象額とする」と「自動変更対象額」が定められています。さらに、第2項で「厚生労働大臣は、年度(四月一日から翌年三月三十一日までをいう。以下同じ。)の平均給与額(厚生労働省において作成する毎月勤労統計(次条及び第九条の五において「毎月勤労統計」という。)における労働者一人当たりの毎月きまつて支給する給与の額(第九条の五において「平均定期給与額」という。)の四月分から翌年三月分までの各月分の合計額を十二で除して得た額をいう。以下この項において同じ。)が平成六年四月一日から始まる年度(この項及び次項の規定により自動変更対象額が変更されたときは、直近の当該変更がされた年度の前年度)の平均給与額を超え、又は下るに至つた場合においては、その上昇し、又は低下した比率に応じて、その翌年度の八月一日以後の自動変更対象額を変更しなければならない。」と定めているのです。

 どういうことかというと、通常は労災保険休業給付は、労災に罹病する3ヶ月前の平均賃金から算定されます。でも、平均賃金が計算できない場合、その金額が著しく安い場合、休業が長期に渡ると罹病前の平均賃金がその後の賃上げや賃下げとズレてくることがあります。それで、今回改ざんが明らかになった「毎月勤労統計」の平均給与額が給付に影響してくるのです。

 実際に、私が担当した事件では、雇用契約書の締結されていないアルバイトとして働いて2日目の職場が火災となり毛髪が全て焼けるような重度の火傷を負った労働者のケースでは、平均賃金が計算できませんでした。そのため、最初はこの法律で書かれているところの4180円の日額計算でしたが、その後自動変更対象額の変更で上積みされました。3年ほど受給していたケースでしたが、途中からの増額でなんとか一息つけた感じで、すごく喜んでいたのを今でも覚えています。

「毎月勤労統計」による金額の変動は、大変な状況にいる人ほど直接の影響が多きいものです。労働基準法、労働基準法施工規則、労働安全衛生法などを紐解いていくと、「厚生労働大臣が定める」と記載された金額の多いこと。

 数字の後ろに存在する多くの生活を考えたら、こんな改ざんは到底できようものではありません。
権力のある国、政府機関、経営者・・。「嘘をついて」も嘘をつき得にさせないため、こんな社会を変えましょう!
posted by 朝倉れい子 at 15:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記