2019年03月29日

「労働組合の存在する」職場と「労働組合の無い」職場との常識の違い

3月もいよいよ終わりです。来週からは4月。新しくたくさんの若い人たちが働き始めます。「働くこと」が辛いことにならないように、「働くこと」が楽しいことになるように、私たちは力を出し合っていきたいと思います。

 新しく「働く」時に見る書類の一つで有る「求人票」に労働組合は「有る」と書いてありましたか?「無い」と書いてありましたか?
 新聞折込チラシとかインターネットサイトの求人募集要領には労働組合の有無の記載が無いものが多くありますが、ハローワークで発行する「求人票」には労働組合の有無について書く欄があります。それは、労働組合が有るか無いか、ということが労働条件の大きな違いになるからです。

 結論から言うと、労働組合が「有る」職場の方が労働組合の「無い」職場よりも労働条件は基本的に「良い」です。
と言うのは、労使の話し合いによってボーナス支給額、賃上げ額、労働条件の変更について決めることが、労働組合の存在する会社におけるルールだからです。

 労働組合が「無い」会社では、「社長の胸先三寸」で全てが決まってしまうことがよくあります。
 そうするとどうなるかと言うと、「俺(社長)が気に入らないことを言ったから、ボーナス下げる」とか、「上司が嫌いだと言っているから、ボーナス低く抑える」とか、精神的にも金銭的にも辛い事が起きてしまいます。

 実はそんな労働組合の無い別々の2つの会社で嫌な目にあった方達の件で、昨年から今年にかけて続けて2件の労働委員会申立をしました。業種も職種も全く異なる会社です。当事者も、職種も性別も勤続年数も全く違う人たちです。共通点は皆、元々が労働組合の無い職場だという事です。
 
 彼らの労働組合が無い職場で、ボーナス支給を巡って何が起きたか。
Aさんは5年程前に社員旅行に行かなかった事でボーナス30万円支給が半額になり、その後ずっと半減されたボーナス支給が続きました。昨年私たちの組合で交渉して、5万円UPで妥結しましたが、会社が妥結の意味を理解していません。妥結の意味を知ってもらうために、労働委員会に申し立てをしました。

Bさんは会社のパワハラによって心の病になり、2017年11月に休業したところ2017年冬季一時金の支給額が、例年の4分の1程でした。にも関わらず、支給明細も支給根拠の説明をありませんでした。労働委員会申し立て後、2019年3月になりし2017年冬季一時金の支給明細が初めて示されました。そして就業規則に記載された算定対象期間が6月から11月で有るにも関わらず「12月以降退職する可能性があるから」減額したと説明されました。このような不合理な理由での減額に対し、次回団体交渉で理事長から説明をしてもらうことになりました。

ボーナスの支給一つとっても、支給の方法自体がハラスメントになるようなやり方が起きてしまう事があります。
労働組合の有る、無しが、重要な労働条件で有る理由です。
そして、私たち労働組合のお仕事は、労働組合がなかった会社で、労使交渉をして、労使で合意して、労働条件を決めるという手続きを多くの会社に知ってもらうことでもあります。

納得のいかない、ボーナス支給や労働条件があったら、相談にいらしてください。



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2019年03月25日

解雇無効時の金銭救済制度は要らない。

厚生労働省の労働政策審議会ですでに6回も「解雇無効時の金銭救済制度」https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000211235_00005.html なるものが討議されています。資料を読んでみると、対象となる解雇は「解雇権濫用に該当する解雇、禁止解雇、就業規則・労働協約に定める解雇事由に基づかない解雇、有期労働契約期間 中のやむを得ない事由がない解雇、有期労働契約に係る雇止 め法理に反する雇止め」という、いわゆる不当解雇そのものです。産前産後とか、労災の休業中とかの法律で禁止されている解雇についても、裁判や労働審判で「解雇無効」と判断された時に「労働契約解消金」を払って解雇していいよという法律を作ろうとしています。

一体誰が、こんな法律が必要だというのでしょう。
今現在は、不当解雇があって、裁判に提訴して、解雇無効の勝利命令を得るとバックペイという「解雇されなければ得ていた賃金相当額」と将来に渡って「賃金を払い続けること」という命令が出されます。命令を受けて、会社と交渉して職場復帰の条件を整えるのが労働組合のお仕事の一つです。命令の前に、「和解」で「金銭解決」ということもあります。

つまり、現状、労働者には職場復帰という方法も金銭解決という方法もありますから、「労働契約解消金」が労働者を救済するというものではない事がよくわかります。
では一体、誰を救済??となると、違法な解雇を強行する経営者を救済する以外に考えようがありません。
何と言っても、どんな不当解雇でも、しかも長い長い訴訟で争った後に「労働契約解消金」を払って解雇を無かったことにしてしまえるのですし、払ってしまえば職場に戻す必要も、給料を払い続ける必要も無くなってしまうのですから、労働者の使い捨てやり放題です。

しかも、資料を読むと「労働契約解消金」の算定根拠に「企業規模」を加えるとか、不当性の高い典型的な類型解雇でも増額しないとか、「事前の集団的合意によって企業独自の算定基礎を入れる」とか、とんでも無い事ばかり書いてあります。企業規模を算定根拠にすれば、ブラック企業率が高い中小企業に働いているというだけで安く使い捨てられてしまいますし、不当性の高い解雇でも増額しないということは今では発生率が少なくなっている労災や産前産後とかの人道上も大いに問題の大きな解雇もやり放題です。しかも、「事前の集団的合意」となると、第2労務部とも言える御用組合を作ったり企業の意のままの従業員代表を使って「集団的合意」に持ち込んでしまえばその金額すらもやりたい放題です。

読めば読むほど暗澹たる思いにとらわれるこの制度設計。こんな変な法律を作らせること自体、やめにしましょう。
posted by 朝倉れい子 at 22:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2019年03月06日

「雇用類似の働き方」のセーフティネットに「下請法」「建設業法」はどこまで使えるのか

日本には現在1000万人あまりのフリーランスがいると言われており、それは国内労働力人口の約6分の1(フリーランス白書2018より)です。フリーランス、言い換えれば「個人事業主」「個人請負」「個人委託業者」として働いている人たちです。
経済産業省が言うところの「雇用関係によらない働き方」であり、厚生労働省の言うところの「雇用類似の働き方」をしている人たちです。政府が推進している「柔軟な働き方」の一つでもあります。

労働組合的観点から言うと、このフリーランス、柔軟な働き方をしている人たちの多くの実態を掘り下げていくと、実態状の労働基準法上の労働者であったり、労働組合法上の労働者であったりする事になります。

私たちの組合でも「契約上は労働者でない」方たちが増え、労働委員会などで争っています。
「雇用類似の働き方」をさせる事で「社会保険に加入しなくてもいい」「労働保険に加入しなくてもいい」「解雇責任を問われない」「労働基準法を守らなくてもいい」と言ううまみに味をしめた経営者が、実態上の労働者であることを認めたくないので争いになっています。

会社が「労働者でない」と言い張るのに対し、では「下請法」はちゃんと守っているかどうかを確認すると、これもまた守っていないのが実態です。つまり、対等な会社同士の商取引をせずに、「雇用類似の働き方」をさせて、支配下に置くと言うやり方をしているのです。

このやり方に対し、私たち組合は労働基準監督署、労働委員会という労働法分野においての声を今まで上げてきました。

そして、今回、逆アプローチで、「下請法違反の事実」を浮かび上がらせようと考えました。
今回、まず最初に手をつけようとしているのは株式会社キツタカの違反問題です。株式会社キツタカは賃貸借不動産物件の畳襖のリフォームをしています。内装業の建設業です。建設業としての東京都許認可番号を持っています。

違反事項を記載した申告書、証拠書類を揃え終わったので、昨日建設業法の監督官庁である国土交通省に電話を入れました。すると東京都の許認可番号があるので東京都建設局に行くようにと言われ、担当部署と電話番号を教えてくれました。東京都建設局の担当部署に電話を入れてアポどりをしましたが、これが結構手間取りました。

思うに、慣れていない??
労働基準監督署や労働委員会みたいに、アポなしで窓口に行って相談する体制ができていないと言うことのようなのです。
建設業法には、社会保険に加入できる請負賃でなければならないとか、著しく安い請負賃はダメだとか、書いてあります。建設業における請負のガイドラインでは、下請けのために親会社を指導してくれると言う箇所がたくさんあります。
内装も含めると、建設業に働く下請けさんはたくさんいるはずなのに、活用されていないとしたらとても残念なことです。

ただ、結論から言うと3月12日にアポイントを取ることが出来ました。

政府が「柔軟な働き方」をセーフティネットなく進めている中で、経済産業省管轄下の公正取引委員会による「下請法」、建築業における「建設業法」がどこまで請負さんを保護しているのかを確認していきたいと思います。

「請負」「委託」と言う契約名称で、親会社の都合よく働かせ、都合よく切り捨てる事にしっかりとNOと言うために、使えるものは全部使って、闘っていくしかありません。
posted by 朝倉れい子 at 21:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2019年03月04日

1990年の賃金水準は今や高賃金?

先週金曜日に、「最低賃金1500円に!」という学習会を開催しました。講師には、にいがた青年ユニオンの山崎さんをおよびしました。山崎さんは40歳前後の方です。
山崎さんが用意していただたレジュメに「クレヨンしんちゃんパパはセレブ?」という項目がありました。クレヨンしんちゃんパパの設定は「30代で専業主婦の妻がいて、子供が二人いて、車を持っていて、ローンで持ち家で、年収600万(年2回ボーナス)。」というもの。山崎さんの年代から見ると、この年収や家族構成は「セレブ」。今の30代や40代前半はもっと貧しい層がたくさんいて、これだけの年収を得られる人はごくわずかのエリート。
 でも、山崎さんよりもだいぶ年が上の私には、どうしてそういう設定なのかわかります。その設定は1980年代後半から1990年のバブル期からバブルがはじけたばかりの時代の平均的なサラリーマン家庭なんです。派遣法は成立したけれど、ほとんどの労働者が正社員だった時代。正社員のお給料が年功序列だった時代。ボーナスが当たり前にあって、退職金が当たり前にあった時代。労働組合が春闘を当たり前にやっていた時代。労働基準法ギリギリとか、最低賃金ギリギリとかがブラックな会社だった時代。
 1980年代の標準は、2020年にさしかかろうという今、セレブ。
 いやはや、なんでこんなに労働者の賃金は値崩れしてしまったんでしょう。

翌日の土曜日、青伸グループ分会という2000年に結成された分会の団体交渉がありました。
会社側の提案する新賃金体系とこの間の諸問題を一気解決するための、賃金組み立て交渉がメーンです。
会社側案に対する組合案を出して、今後さらに詰めることになりました。
交渉の流れは悪くないのですが、その時に、会社役員が一言言いました。
「他の従業員に比べて組合員のAさんとBさんだけが突出して賃金が高い」。それは逆にいうと、他の人が「安い」。
 この理由を私たち組合員は本当によく知っています。
 なぜかというと、組合を結成した2000年頃から運転労働者の賃金値崩れが社会的に発生したからです。組合はただ、定期昇給年500円を早々に妥結し、協定書化しただけです。つまり、現在「賃金が高い」と言われているAさんもBさんも2000年当時の賃金に500円×19年分が上積みされているだけなのですが、相対的にたの運転手さんの賃金が値崩れしたために「高い」と言われる結果になったに過ぎないのです。
 組合員のAさんとBさんの賃金が値崩れしなかったのは、組合に入って会社と交渉し、賃下げ提案を断ってきたからだけの事です。たまに労働委員会をやったり、たまに組合旗を出したりはしていますが、大きな争議や賃上げ闘争をしていなくてもこの結果。労働組合組合員で居続けた成果です。

私は、この役員の言葉を聞いた時、昨夜の「なんでこんな時代になってしまったのか」という疑問の謎が解けました。「労働組合の力」を労働者が使わなくなったからです。
労働組合に入っているだけで値崩れは防げるのに、入っていいなかったから、入らなかったからこんな時代になってしまっています。
今からでも遅くありません。労働組合に入って、値崩れ前の賃金水準、雇用不安のない雇われかた、そこにディンセントワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の付加価値をつけて、良い時代を作っていきましょう。


posted by 朝倉れい子 at 21:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記