昨日8月8日に木村建設(本社 羽村市 産業廃棄物処理業 組合員はダンプの運転手)の会社側代理人弁護士から内容証明郵便が組合事務所に届きました。その内容は、7月1日付中労委命令に対し、「国(中労委)を被告として、再審査棄却命令取消請求訴訟を8月6日に提訴したことを告げるものでした。
不当労働行為事件は、地方労働委員会を1審とし、中央労働委員会が行政審の最後になります。
まず、地方労働委員会に組合が会社が行なった不労働行為の救済を求めて申立ます。そして地方労働委員会から命令が出て、その命令に不服であれば労使双方とも、中央労働委員会に再審査申し立てができます。
木村建設事件の場合は、組合にとって東京都労働委員会命令は勝利命令でした。それで、会社側が中央労働委員会に再審査請求を申立ました。結果、会社側の主張は「棄却」されました。中央労働委員会命令に納得いかない会社は、命令を出した中央労働委員会(国)を相手にして訴訟をするわけです。なので、訴状は組合宛ではなく、国宛に届きます。そこで、会社側代理人はわざわざ組合に連絡してきたということでした。内容証明郵便でなくても良い内容なのですが。
会社が「事実認定また法的評価についてもいずれも誤りがあり」(会社発内容証明郵便記載)と主張する中央労働委員会命令は、それではどのように会社の主張を退けたのか、次の争点に沿って振り返ってみたいと思います。
争点1 木村建設が組合員に配車を指示しなかったことは不当労働行為に該当するかどうか
中央労働委員会の判断
「会社都合休業として日給額の6割が支払われているから、不利益があると言えないと主張するが、休業手当として日給額の6割しか支払われておらず、休業指定を受けなかったものに比べて経済的待遇状の不利益を被っている」「会社は従業員に対してトラブル防止のための適切な措置をとるべきであるのに、衝撃を与えたH従業員に対して何らの措置を行わず、逆に衝撃を与えられた方の組合員であるNには配車をしなかったのである。会社の主張には合理性がない」
したがって、不利益取り扱いの不当労働行為に該当する。
争点2 木村建設社長が「組合結成により弁護士費用が必要なため、夏季賞与を支払わない旨の発言をしたかどうか。この発言が不当労働行為に該当するかどうか
発言が認めら、不当労働行為と認定されています。
争点3 配車係りらの発言が不当労働行為に該当するかどうか
中央労働委員会の判断
「木村建設社長は発言をした際、これを聞いたI従業員が組合員らに対し組合活動をけん制する行動にでる可能性があることを予期しながらこれを黙認したものといえる。」「会社とI従業員との間に、I従業員が組合員らに対して組合活動をけん制する行動に出ることについて黙示的な意思の連絡があったことが認められる」「会社とI従業員との間の黙示的な意思の連絡に基づいてされたものであり、組合活動を非難してけん制するものであるから、組合の運営に対する支配介入に当たる。
争点4 木村建設社長が不当労働行為発言をしたかどうか
中央労働委員会の判断
「発言は証拠(録音の文字起こし)上、明らかである」「会社の主張事実を認めるに足る証拠はなく、会社の主張は社長発言が組合の運営に対する支配介入であるとの判断を左右するものではない」「社長発言は、組合の運営に対する支配介入である」
争点5 組合のストライキを「違法スト」と断定して無断欠勤扱いをしたことが不当労働行為に該当するかどうか
中央労働委員会の判断
「経緯やストライキ通知書の記載内容などからみて、組合は一定の手順を踏んだ上で不当労働行為に抗議することを目的に争議行為をしたものであり、争議行為の正当性があるというべきである」「したがって、ストライキ通知に対する会社の取り扱いは、ストライキという正当な組合活動を理由としてされたものであり、不当労働行為意思が認められる」「ストライキ通知に対する会社の取り扱いは、ストライキという正当な組合活動を理由とする不利益取り扱いであるとともに、ストライキの抑制を企図した支配介入に当たる」「会社の主張は、その前提を欠き、採用することができない」
争点6 木村建設社長発言に基づく、夏季賞与半額支給は不当労働行為に該当するかどうか
中央労働委員会の判断
「会社は賞与の半額支給の理由に関し、団体交渉において、賞与の支給については社長の裁量、経営判断として説明せず、例年より遅い9月に、前年度の半額程度で支給した理由を一切説明していない」「事実を総合すると、賞与の半額支給は、会社が(中略)組合を嫌悪し、組合員であることや正当な組合活動を理由としてされたものであると推認される」「従業員に対し、組合のせいで夏季賞与が半額支給されたとの印象を与えて、組合の弱体化を企図して行ったものであることが推認され、組合の運営に対する支配介入に当たる」「社長発言は、組合員、非組合員に一律に不利益取り扱いを行えば不当労働行為責任を免れることができるという認識を示すものであり、会社はこの認識に基づき、組合員のみならず従業員全員の賞与を半額にした。したがって、従業員全員に夏季賞与を例年の半額にしたことを持って、不当労働行為いしがないということはできない」
争点7 団交における会社の対応は不当労働行為に該当するかどうか
中央労働委員会の判断
「賞与について社長の裁量、経営判断として説明せず、9月に前年度の半額程度で支給した具体的な理由を説明していない。このような会社の対応は、夏季賞与半額支給の説明として不十分であり、誠実交渉義務を果たしたということはできない」「夏季賞与が会社の裁量で行うものであることは、不誠実団体交渉であるとの判断を左右するものではない。会社の主張は採用することができない」
争点8 組合員らに対する解雇は不当労働行為に該当するかどうか
中央労働委員会の判断
解雇理由ごとに判断が出ていますので、以下その内容。
解雇理由1 団体交渉申入れ時に無許可でビデオ撮影したこと
「言った言わないという争いになる自体を避けるとともに、組合員の行動に規制を可決ために組合の内部資料として撮影しているとされるものである。この方針の目的に一定の合理性がないとまでは言えない」「撮影の状況から、組合に会社を挑発したり会社の業務を妨害する意図があったことはうかがえない」「背景に社長室内の監視モニターが映っていたが、そのモニターは以前、社長が取材を受けた際の雑誌記事上の写真の背景にも映っており、その雑誌はインターネット上にも掲載されているものである。その他、撮影により会社の機密情報が外部に漏洩するなどの会社の業務に悪影響を及ぼした事実も認められない」「以上の通り、組合が無許可ビデオ撮影をしたことは解雇理由にならない」「事前にアポイントメントがなかったからと言って、直ちに申入れが正当性を欠くとまでは言えない」「解雇の通知を受けた後に、本件解雇に抗議する趣旨で動画をyou tube にアップロードしているから解雇事由にはなり得ない」
解雇理由2 会社側の不当労働行為発言を録音したこと
「組合員らは相手方従業員を挑発した形跡はなく、録音したことにより従業員間のトラブルを発生させた事実も認められない。」「会社による不当労働行為が度重なっており、組合員らは更なる不当労働行為が行われる可能性のある状況において、これを警戒し、不当労働行為が行われた際の記録を残して自らの身を守ろうと考えて会話の秘密録音を行ったものであり、緊急避難的な対応としてやむを得ないものであったと言える。」「したがって、組合員らの秘密録音行為は、正当な組合活動の範囲を逸脱するものとまでは言えない」
解雇理由3 業務上保管するダンプの鍵の返却
「組合員の危惧は相応に理解し得るし、同危惧に対して会社が十分な説明をした形跡がないことも考慮すると、鍵を返却しなかったことを解雇事由とするのは相当でない」
解雇理由4 「無断欠勤」
「不就労は、ストライキ権を行使して行われたものであって、無断欠勤というのは相当でない」
解雇理由5 「組合員と会社との信頼関係の崩壊」
「組合員らと他の従業員および会社との間の信頼関係が崩壊したとしても、それは社長の反組合的な言動に起因するものであるから、解雇理由5に合理性はない」
追加的解雇事由
「本件解雇後に初めて主張されたものであり、特段の事情のない限り、これらを持って本件解雇の合理性を根拠づけることはできない」
解雇理由まとめ
「本件解雇は、会社が組合を嫌悪し、会社から組合員らを配乗するために行ったものであるから労働組合法第7条第1号および第3号の不当労働行為に該当する。」「会社が指摘する組合の分会結成、勧誘および活動は、前期認定の事実関係の下で行われたものであり、社会的相当性を欠くとまで認められず、労働基本権の濫用といえないし、組合が不当労働行為救済制度の保護を受けられないということもできない。会社の主張は採用することができない」
争点9 救済方法(以下は中労委判断)
1、休業補償
「賃金相当額の支払いを命じるのが相当である」
2、社長および従業員らの不当労働行為発言
「将来、組合員らが原職に復帰した時点で」「正常な集団的労使関係秩序の回復、確保を図るため、会社に対し、組合活動を批判しまたは中傷する旨の組合の組合員に対する発言を代表取締役又は従業員にさせるなどして、組合の運営に支配介入してはならないことを命じるのが相当である。
3、夏季賞与半額支給
「不労働行為から組合いらを個人的に救済するとともに、正常な集団的労使関係秩序の回復、確保を図るために支払いを命ずるのが相当である」
4、解雇
「組合員らを個人的に救済するとともに、正常な集団的労使関係秩序の回復、確保を図るためには、会社に対し、本件解雇をなかったものと取り扱い、原職復帰および解雇の日の翌日から原職に復帰するまでの間の賃金相当額の支払いを命ずるのが相当である」「原職復帰を不可能とする事情は存せず、会社の主張は採用することができない」「バックペイの支払い命令において、本件解雇により侵害された個人的被害の救済の観点と、集団的労使関係秩序の回復、確保の観点とを総合考慮すると、中間収入を控除しないものとするのが相当である」
5、ポストノーティス(2度と不当労働行為しませんという文書の掲示)
「会社の不当労働行為が繰り返されており、組合員らが原職復帰した時点で、組合および組合員らに対し同種の不当労働行為が繰り返される恐れがあるから、正常な集団的労使関係秩序の回復、確保を図るために文書の掲示を要する」「会社は、掲示という方法を採用した場合には、掲示の方法や立ち入りなどをめぐり更に組合との間での紛争に発展しかねず、帰って、労使間の平穏な協議を回復するという不当労働行為制度の趣旨に反すると主張するが、独自の見解であって、採用することができない」
81ページに渡る、長い命令文のダイジェストもだいぶ長いです。
ここに引用した通り、会社の主張は全て「採用することができない」として退けられました。
それでも、国が間違っているという会社です。
しかも、これまでも木村建設は四人の弁護士が着任していましたが、訴訟提訴にあたり更に2カ所の法律事務所から2名の弁護士を増強してきました。
それでも、中央労働委員会から命令が出され、命令の確定まで、ゴールがどんどん近づいてはいます。
組合潰しが同じように発生しないためにも、私たちも頑張っていきたいと思います。