2018年10月02日

10月1日から最低賃金が上がりました。全国一律1500円に到達するのは何時?最賃からこぼれ落ちる「労働者」には??

 東京では10月1日から最低賃金が985円になります。東京23区内では、最低賃金で求人募集を出してもあまり来ないようでが、同じ東京でも23区外の三多摩地域では最低賃金に従業員の賃金を設定している会社がまだまた多いのが現状です。そして、多摩地域は東京なので985円ですが、隣の埼玉では最低賃金は10月1日に上がったといっても898円。県境をまたぐだけで、1時間87円も違います。私たちの加入組合は主に三多摩地域で働く人たちですが、三多摩と埼玉は隣り合わせなので埼玉に働く人たちも少なからずいます。そして、埼玉、東京にまたがって営業を展開している会社で結成されている組合もあります。県をまたいで、店舗、工場を展開している会社では、同じ仕事をしていても埼玉で働いているというだけで、1時間87円も安くなります。県が違うだけで賃金は1日8時間で日給が696円安くなります。私たちの組合に加入している白百合分会が働く白百合クリーニングでは、東京と埼玉で展開されています。こちらの店舗では、「通し」勤務は11時間なので、(87円×8時間)+((87円×1.25)×3時間)=696円+326.25=1023円も1日あたり安いという計算です。
 ところが、最低賃金が安いからといって、価格設定が東京と埼玉で違うということはありません。生活にかかる費用も、東京と埼玉で大きく変わるわけでもありません。一人の問題から地域の労働条件水準の向上までが三多摩労働組合のお仕事です。
賃金、労働条件の企業間格差、地域間格差はどうにかならないものかと常々思うところです。さらに、最近増えている「個人事業主」扱い、フリーランス、などでは、実体上企業に生計を左右されているにもかかわらず、最低賃金の枠外に置かれている現状も、本当、どうにかしなければなりません。
そんな事を考え、you tube を作成してみました。是非、ご覧になってください。
posted by 朝倉れい子 at 19:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 労働組合活動

2018年06月21日

セーフティネットから落とされる労働者を作らないために出来ること

労働者は、弱い立場にあるからセーフティネットに守られています。
セーフティネットは、失業した時は雇用保険で失業給付が支払われ、長時間労働した時は割増賃金が支払われるほか労働時間の規制があり、最低賃金が定められ、年取って働けなくなったときのために国民年金に厚生年金が足され、病気になった時には傷病手当金の支給があり、仕事で病気や怪我をした時には解雇制限と療養費休業補償費が払われます。
日本のこの制度は、まだまだ完全ではなく、労働時間が短いと対象にならないものがあったり、不十分なものもたくさんあります。それでも、しっかりと活用すれば、なんとかどうにか生きていけます。
けれど、日本の場合、「労働者」でないと判断されてしまうといきなりこの「セーフティネット」が全てなくなります。
そして、労働者ではない場合のセーフティネットは、生活保護以外、生活を支えることができるものはないのが現状です。

 国家が生活の最低保証を行う「生活最低保証(ベーシックインカム)制度や、国家が医療費無償などの高福祉政策を実施していれば、「労働者か」「事業主か」の選択は必要ないのですが、残念ながら日本のセーフティネットは、労働者を雇用した事業主が労働者のセーフティネットの全部であったり一部であったりの負担を行う仕組みです。

こんな中で、経営者がセーフティネットを負担しなくてもいい、つまり経営者にとって費用負担が「お得な」働かせ方が、「働き方改革」にも出てくる「雇われない働き方」です。私はこれは単に「雇用契約を締結していないだけの働かせ方」だと思います。「雇われない働き方」をしている方は様々な契約書を持っていたり、口頭契約をしています。「個人事業主」だったり、「請負」だったり、「業務委託契約」だったり。労働者の方も「雇われる」よりも「自由で」「バリバリ稼げる」と誤解しがちです。

でも、労働者か事業主か、この二つの決定的な違いは、「生産財」である「資本」を持っているかどうか。自分は労働をしないで所有している「資本」に他人の労働を加えて、富を得ているか。お金に働かせているか。自分のお金が、新たなお金を呼び込んでいるかどうかですよね。
自分の二つの両腕という道具しか持たずに、仮に別の道具を持っていたとしても自分の腕の補助として使うための道具を持っているにすぎなければ、それは自分の労働で生計費を稼いでいる労働者という名称の、セーフティネットを必要としている人たちです。

「高度プロフェッショナル」制度で労働時間管理を無くし「成果で賃金を支払う」などと政府が言っている現在、労働基準法上の労働者性について「時間管理されていること」とか「時間で賃金が支払われていること」は、単なる指標であってそれが絶対の基準ではなくなって来ています。事業主がどのような「契約」を交わし上手にカムフラージュしようが、セーフティネットが必要な働き方をしている人たちに、労働基準法ほか労働法制を適用しなければ、労働法がどんどんザル法にされて行くばかりです。
posted by 朝倉れい子 at 16:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 労働組合活動

2012年12月19日

労働組合結成 仲間を信じる事から始めよう

以前、といっても、そんなに昔でない以前、私達の組合に「S」という会社の分会がありました。
詳細は後述しますが、昨年3月に解散しました。
そしてその後、別の地域の合同労組で同じ「S」という会社の組合が結成されてとのことで、私のところに問い合わせがありました。
私は引っかかる気持ちがあったので、その事を、問い合わせた人に伝えました。
そして、先日、その問い合わせしてきた人とバッタリ都庁前で会ったのですが、その時彼はこう言いました。「あの話は言われたとおりかもしれない。『S』組合の1人が亡くなって、遺品を整理していたら会社との怪しい協定書が出てきた。」・・・・

人生は一度きり。裏切られる事はとても辛いけれど、裏切った過去を持ったまま死んでしまうのはもっと悲しい。

その『S』分会は、私達の組合に加入したとき、当初3名の解雇でしたが、未払い残業代がある事がわかり、二桁の組合数になりました。そして東京都労働委員会での係争もあり、半年後には全員解雇撤回、職場復帰、バックペイの支払いが実現し、労働組合の力を発揮する事が出来ました。ところが、その9ヶ月後、ちょうど東日本大震災が発生する直前くらいですから、3月の初旬に、職場復帰後に腰痛で自宅療養を余儀なくされていた分会長から「分会員が誰も電話にでない」「団交出席の連絡が誰からも来ない」という連絡が入ったのです。この年の1月には川崎と町田の労働基準監督署に申告を行い、すこしずつ前進していたはずでした。分会長が腰痛で休業していた事は不安材料でしたが、職場の仲間とはつながっていると思っていたのですが。分会長のその電話を受けて、私も分会役員の人たちに電話を入れましたが、やっぱり誰も出ません。すごく嫌な感じです。そして大震災。実家が茨城で、その実家で被災してしまった分会長から「だれも電話に出ないし、被災して心が折れた。もう分会解散する」との連絡が有ったのはそれから程なくしてからでした。

 合同労組の専従である私からの電話を、組合員の人が取らなくなるときは、ほぼ、切り崩し=組合脱退勧奨があった時です。それも、目の前に良い条件がぶら下がった時です。目先の利益に、後先考えず飛びついて行く事い精一杯で、自分を守ってくれた労働組合など、さっさと縁を切る、そんな構図です。まるで、イソップ物語の、繁った木の後ろに身を隠した鹿が、その木の葉っぱを食べてしまったばかりに猟師に見つかってしまう寓話のようです。身を守る手段を大事にせず、目先の誘惑でせかく繁った樹木を裸にしてしまう事で、身を滅ぼしてしまう・・・。とても悲しい話です。

 彼らが、私達の組合と、何の連絡もとらなくなってから、何があったかわかりません。ただ、彼らが私達の組合から去ってから1年以上経ってから違う合同労組に加入した理由は解雇と未払い残業代です。という事は、会社とどんな協定をしたのか、わかりませんが、残業代をきちんと払ってもらう事が出来ず、解雇に至ったということです。

 労働組合という、人と人との関わりによって成り立つ仕事、しかも労使関係という日々の生活、生活費と直結する、利害関係の真っ只中の仕事では、「信頼」という喜ばしい財産が出来る反面、裏切られる事も多くあります。労働者は弱い。弱い労働者ほど目先の利益で動いてしまう。この事実をいつも反芻するのですが、それでも裏切られる毎に心がザラザラしてきます。
今回の一連の出来事、心の中のザラザラしたものが、悲しみになってしましました。

信じることから始め直さないと癒えない、そんな感じです。
仲間を信じる事から始める労働組合の力を知ってもらいたから、私達の組合を訪ねてきてくださいね。

posted by 朝倉れい子 at 13:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 労働組合活動

2012年11月29日

労働委員会制度と申立書作成 その2

1昨日の続きです。が、1昨日に記載したAとBは後日にして、ちょっと別の話。

昨日、JUKIの団体交渉が有りました。JUKI事件は、東京都労働委員会で勝利命令を勝ち取った事件です。その勝利命令に基づき、開催された団体交渉で昨日で3回目の交渉でした。この勝利命令、このブログにも書きましたが、経産省から査察が入り、営業停止が予測された家庭製品事業部を別法人に分割した後に、解散させ、そこに働いて来た従業員を希望退職に応じるか解雇されるかのどちらも「退職」しか選択肢のない選択をさせて全員辞めさせたJUKIの親会社責任を認めて団体交渉開催命令を出したものです。判例からいって、けっこう画期的な内容です。ですから、この労働委員会命令をきちんと読めばJUKI株式会社は自らの行為を反省しないといけないはずなんです。けれども、JUKI株式会社は「団体交渉をやればいいんだろ」という態度を崩さず、「労働委員会の事実認定は間違っている。認めていない」と主張します。労働委員会の事実認定が間違っているならば、上級審で争えばいいのに、ただただ世間体、体裁だけを取り繕い、本質的解決を回避するわけです。これはまるで、JUKI株式会社が作成した営業マニュアルによって消費者からの苦情が膨大な数になっていたのに、会社が真剣に消費者に謝罪して向き合うのではなく、苦情が来ている部署だけを切り離して潰した過去の経過と同じ会社の体質です。

組合に加入してから発生した解雇事件や不利益扱い事件で、それが「組合活動を理由して」「組合加入を理由として」行われたもので有れば、ダイレクトに不当労働行為として申立をして、「現状復帰命令」つまり、賃金カットされた分を返済して、解雇であれば職場に戻す、という命令になるのですが、解雇されてから労働組合に駆け込んで来た事件は、団体交渉議題にはなっても、解雇そのものを不当労労働行為として争うことにはなりません。それで、団体交渉そのものの応諾義務違反であるとか、不誠実団体交渉とかの争いになります。

問題はこの不誠実団体交渉、団体交渉拒否事件です。出される命令は「団体交渉を誠実に応諾しろ」というものです。それに支配介入要素が立証できるとポストノーティス命令と言って謝罪文交付から掲示、入り口に板書までの様々な悪質性に応じたレベルの命令が出されます。

組合にとって、団体交渉は生命線ですから、誠実に開催されないとその先に進めません。そして、職場の中での労働組合の地位の向上にはポストノーティス命令はとても大事です。

しかし、これらの申立を代理人弁護士に依頼しようとすると大きな壁が立ちはだかります。何かというと、「お金にならない事件」なんです。不誠実団体交渉事件というのは。申立書における請求額がそれだけではゼロ円。請求どおりに命令が出されても、金額の支払いはゼロ円です。弁護士さんにお支払いする成功報酬を約束出来ない事件です。しかも、不誠実団体交渉事件というのは団体交渉の再現により立証しなければなりません。一つ一つの団体交渉の内容を参加者、場所、誰が何言ったかと、細かく証言しないと行けません。とっても手間がかかります。面倒くさくてお金にならない事件。でも、労働組合が労使対等の団体交渉を手に入れるには必要な事件。
 だから、不誠実団体交渉事件を扱ってくれる代理人さんはあまりいません。それで、会社側の代理人は不誠実団体交渉はやり得なのでバンバンやるわけです。

私がこの仕事をやり始めた頃、まだ20代後半だった頃。担当した組合結成で、不当労働行為が起きました。それで知り合いの弁護士さんにお願いした所、まあ、面倒くさくてお金にならない事件だったからでしょう。事件を引き受ける条件は「申立書を書いて来たらやってあげる」でした。「書き方が分からない」と言うと、国労の事件の申立書を渡されて「参考にして書いて」と非常に乱暴な指導をしていただいて何とか書きました。今思うと、ただ形式をなぞっただけの、争点整理もあいまいなものだったのですが、とにかくそうやって鍛えていただきました。このときは、なんて酷い人なんだろう、とその弁護士さんの事を思っていました。が、今から思うと、不当労働行為と闘うのは労働者自身であり、労働組合自身。その入り口の労働委員会申立で、そこの労働者が、その労働組合が格闘にしなければ闘えないぞ、という意味もあったのだろうと思います。

では、この続きはまた後日。
posted by 朝倉れい子 at 13:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 労働組合活動

2012年10月19日

労働組合と弁護士、社労士、どこに相談すれば解決するの?

労働相談で、労働組合に相談するのと、弁護士に相談するのと、社労士に相談するのでどれが良い?という相談を受ける事が有ります。
相談する方は藁をも掴む気持ちで、どこに相談するのが一番良い解決になるのかな?という気持ちなのでしょう。
もともと性質の違う、役割の違うものを比べるのは無理がありますけれど大体こんな回答をしています。

「手段」の問題として考えた時、例えば未払い残業代問題であればこのように答えています。
 働いている会社で残業代の請求をすると、その結果は「過去分+就業規則の改訂」という形になるので、就業規則の改訂まで出来るのは労働組合だけですよ。と。
 その理由は、弁護士さんに頼めば訴訟は出来ますが、弁護士さんの作成してくれる内容証明郵便には強制力は有りません。そして訴訟は過去分の賃金を請求する場であって、将来の就業規則を作成する場では有りません。また、残業代は労働基準法にその計算方法が細かく定められているものですが、これを知らない弁護士さんが多いのも事実です。
 社労士さんは残業代の計算の相談にはのってくれるかもしれませんが、訴訟はしませんし、交渉権があるわけでは有りません。
 労働組合では、会社に対して団体交渉権が有りますから、会社が団体交渉に応じない法律違反になります。交渉において強制力が有ります。集団的労使関係としての就業規則の作成改訂は労働組合の力が一番発揮できる場です。もちろん、交渉毎の中には過去の残業代計算も含まれます。訴訟をする場合には弁護士さんを頼む事がありますが、労働問題に詳しい、残業代訴訟が得意な顧問弁護士がいますよ。
 と、いつもお答えしています。


以上、問題解決の「手段」としての相談先として労働組合が一番良いですよ、というお話。
だけど、「手段」の説明をしすぎると、本当の労働組合の姿が見えなくなってしまいます。
「手段」の労働組合ではなく、「生き方」としての労働組合。
目先の損得だけの利益ではなく、人生においての利益を見据えた相互扶助が組合です。
お金を出し合って、お互いに助け合う。労働組合でなくとも、組合と名のつくものは皆そういう性格です。

お金を出して「サービス」を買う、例えば企業が多額の顧問料や、着手金を払って弁護士さんや社労士さんの知識や労働を買うのと、労働組合に加入して助力を仰ぐのとは全く異なっています。
相互扶助がめんどくさい!という話もよく聞きます。多額のお金があれば弁護士さんに毎回の団体交渉に同席してもらう事も出来るでしょうけれど、そんなお金がないから、人に雇われて働いているのですよね。
お金が無くても、卑屈にならず、権利を主張する為には、人と人との関係の力で、活路を見出す、これが労働組合です。
posted by 朝倉れい子 at 16:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 労働組合活動