2019年12月05日

残業時間隠しのために、変形性労働時間制度は存在しています。働き方改悪ですよ!

 公立校教員の「働き方改革」の一環として、年単位の変形性労働時間制導入を柱とした「改正教職員給与特別措置法」が昨日参議院本会議で可決され成立しました。とんでも無いことです。「労働時間を短くする」ことを目的とするというお題目であった「働き方改革」が、実は「長時間労働の事実」を隠匿し、「本当は長時間労働なのに、それを見えなくする」=「長時間労働の合法化」である事を明らかにしています。
<変形性労働時間=労働時間の組み方で残業代を払わなくてもよくした制度>
 漢字が並ぶ法律の名前のせいで、とてもわかりにくもののように見えますが、労働時間を組み替えて残業代を払わなくてもよくした制度が「変形性労働時間」の本性なのです。
<実際にあった話ー年間変形性で50万円の残業代を安くしていた話>
 実際にあった事ですが、全国一般三多摩労働組合に大和製作所という会社で働く組合員がいます。ここの会社は取引先会社の年間カレンダーをそのまま利用して、「年間の変形性労働時間制」を採用していました。ところが、必要要件である従業員代用との協定書を締結していなかったので、年50万円/一人当たりの未払い残業代が発生し、今年の秋頃に支払われました。逆に言えば、「変形性労働時間」でなければ、そこで働く人たちの年収は50万円高かったはずなのです。ちなみに、この会社のボーナスは大体10万円から20万円です。50万円の年収の差はとても大きいものです。
 他にも、全国一般三多摩労働組合では、昨年から今年にかけて「武蔵野クリニック」というところで「月の変形性労働時間制」を就業規則に記載しながらも、計算間違いがあり請求し一定の回答を得ている事件もあります。
 この「変形性労働時間」の「成立要件」を満たさずに、未払いが発生するケースがとても多いのです。これは小さい会社に限らず、大企業でも多く発生しています。
<1日8時間、週40時間の労働時間の最低基準が壊され続けている結果>
 この「残業時間」を「所定労働時間内」にすり替える「変形性労働時間制度」が1987年(昭和62年)に「労働時間の弾力化」として導入されるまでは、1日8時間を超えて働いたら残業代(時間給1.25倍の割増賃金)が払われることは「常識」でした。ところが、1日8時間の労働時間に対して多数の例外が設けられてから「うちの会社には残業代という制度なない」「残業が発生しない法的仕組みになっている」とか、「誤った情報」が本当に増えています。
このような状態を脱するために、学校教育で労働基準法をしっかり教えてもらいたいと思うのですが、学校の先生たちの労働時間すらも変形されるとなると、1日8時間の労働時間に対する理解は更に遠のく危険性があり、ともて恐怖です。何が
「働き方」のスタンダードかが見えなくなり、ブラックな働き方で命を削ることになっている今、学校教育の現場が「ブラック」であれば、本当に「ブラック」でない働き方見えなくなります。学校の先生たちが、自らの労働をホワイト化することで、これから社会に出て行く若い人、アルバイトしている生徒たちに、ホワイトな「働き方」のスタンダードを見せてもらえるように、本来していかないといけないと思うのです。
<最後の砦 過半数労働組合または従業員代表が、年間変形性労働時間の労使間協定書にサインしないこと>
それでも、年間変形性労働時間に現場からNO!という声を出すことは出来るんです!しかもそんなに難しいことではありません。年間変形性労働時間を導入するためには従業員代表との協定書を締結していないとなりません(労働基準法32条の4、労働基準法規則12条の4第1項目)。残業時間が隠され、過労死労災認定すらも遠のく恐れのある、この変形性労働時間制度の提案が経営者からあった時、または、協定書の対象期間が終了し次の期間が始まる時(年1回はあります)に、過半数労働組合としてNOという意思一致をすれば良いのです。もし、労働組合が無い職場、過半数労働組合が無い職場であれば、「変形性労働時間制度にNO」という従業員代表を選べが良いだけです。
先ほどの大和製作所未払い残業代の件ではありませんが、年50万円稼ぐのは結構大変です。年間変形性労働時間制度にNOというだけで、損しないで済むわけです。職場の仲間と団結して、1日8時間、週40時間以上働いたら残業として1.25倍の割増賃金を請求できる職場、残業として労働時間管理ができる職場にしていきましょう。
posted by 朝倉れい子 at 14:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 労働条件

2018年07月24日

仕事中に熱中症!それって労働災害です。

 労働者は「災害」的暑さの中でも、働いています。屋外でも、エアコンの無い現場でも、環境に問題のある工場でも、働いています。
 暑いですねーー。気象庁がこの暑さを「災害」と認定しました。世界気象機関は「温室効果ガスの増加による長期的な地球温暖化の傾向と関係がある」と分析しているようですから、突発的な自然災害とばかりいえない人災かもしれませんが、とにかく殺人的な暑さであること、そしてこれは続きそうなことだと言うことが確かなことです。今年の熱中症の死亡者数は昨日までで94人だそうです。本当に危ない。

 高齢者や子供が熱中症で搬送されたと言うニュースも多いですが、昨年まででも、熱中症の死傷で労働災害と認定された人数はちょっと半端な数字では有りません。厚生省労働省の調査をみると、昨年平成29年が528人、平成28年が462人、平成27年が464人、それぞれ二桁の死亡者がいます。労使共に労災の概念が薄くて労災扱いになっていないなんて、ケースもあるかもしれませんから、仕事中に労働災害としての熱中症になった方はきっともっといると思います。
 仕事中に頭がクラクラしたり、熱中症の症状が出たら、直ちに仕事を中断して横なったり、救急車を呼んだりしましょう。そして、すぐに労働災害の手続きをしましょう。もし労災保険に加入していなくても、会社が労災扱いを拒んでも、直接労働基準監督署に手続きを取れば、大丈夫です。不安があるときは、いつでも労働組合に相談 http://zsantama.org/form.html してくださいね。

熱中症の労働災害判例では、裁判所は次のように言っています。「労基法施行規則三五条、別表第一の二第二号八は、「暑熱な場所における業務による熱中症」を業務上の疾病としているのであるから、労働者が暑熱な場所における業務に従事中、熱中症を発症して死亡したと認められる場合には、特段の反証がない限り、当該疾病は業務に起因するものと認めるのが相当である。」(平成16行(ウ)33事件、労働判例923号54頁)
自信を持って、労災認定申請をしましょう。労災で休業補償を受けて、ゆっくりと休養しましょう。熱中症になったのに、お金が心配だったり、会社が休ませてくれなかったりして、休養を取らずに働いたら、体が休まらずに悪循環になってしまいますからね。

 そして、熱中症予防は、様々な方策で防ぐための職場の環境づくりが必要です。厚生労働省もこんなリーフレットを出しています。https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/leaflet_11.pdf
要点をまとめると、@輻射熱も含めた暑さ指数の測定をしっかりして、Aとっても暑い時は作業を中断B休憩時間を確保する作業計画C暑さ指数が基準値を超えるおそれのある作業場所に簡易な屋根の設置、通風又は冷房設 備の設置、ミストシャワー等による散水設備の設置D作業場所の近くに冷房を備えた横になって休むことのできる休憩場所の確保。E透湿性及び通気性の良い身体を冷却する服、通気性の良い帽子、ヘルメッ ト。ということです。

中小企業では、休憩室がきちんと完備していないところ、温度管理ができていないところがたくさんあります。とても暑い中で、交渉も大変ですが、何よりも大事な健康管理のために、会社に安全配慮義務を果たしてもらいましょう。
posted by 朝倉れい子 at 18:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 労働条件

2018年07月14日

ボーナスの支払い根拠

 中央労働委員会に会社が不服申し立てをしている木村建設(本社 羽村市)事件での、会社の不服の理由に対する反論を書きながら、こんな風に会社を指導する弁護士が増えると困ったものだなあと思ったことが多々あります。
その一つが、ボーナス支払いに関する会社の交渉応諾義務です。

東京都労働委員会からの救済命令は、@「組合が結成された事により、『弁護士代がかかる』としてボーナスを支払わない」と社長が述べたことが支配加入である。A組合が結成されたことにより「ボーナス」を半減したことが不利益取り扱いである。というものです。

これに対し、会社側が反論しているのは「ボーナスの支払いは社長の裁量なので、支払うも支払わないも、社長が決めることだから、払わなくとも半額にしても不当労働行為にはならない」「ボーナス支払いは就業規則に記載していない」ということです。

それで組合は次のように反論しました。
@就業規則は周知されていないと効力がない(木村建設では不当労働行為があった2015年夏時点で就業規則を見たことがある従業員がいなかった)ので、就業規則の記載は関係ない。
Aボーナスを年3回支給することが、求人票に記載されているので、ボーナス支給は入社時に契約した労働条件である。
B毎年前年支給分よりもUPした金額で支給されているので、ボーナス支給を見込んでローンなどを組んでいる。従業員らは支給されることについて期待権を持っている。

木村建設の場合、上記に記載した通りの事情で「組合結成」を理由に「支払わない」とすることや「前年半額支給」とすることが不当労働行為になるわけです。
そして、不当労働行為ばかりでなく、ボーナス交渉の請求根拠もここにあります。

そもそも、ボーナス支給は法律に義務として定められたものではありませんが、労働条件問題なので会社側に団体交渉応諾義務があります。就業規則に定めていても、いなくても、誠実に団体交渉を開催しなければならない事項です。就業規則に支払わないと決めていても、就業規則変更要求も含めて、会社は誠実に団体交渉に応じなければなりません。木村建設のように、「社長の胸先三寸で支給額を決めている」という中小企業であれば、その社長の胸先三寸の内容をわかりやすく組合に説明しなければなりません。そして、「胸先三寸」といえども、以下の内容は回答してもらわないと、組合は妥結の判断が難しくなります。
@全社員への支給総額
A平均支給額(平均年齢)星2️加重平均で求めましょう
B勤怠査定の有無と査定基準
C考課査定の有無と査定基準

会社の経営状態が厳しいから出せないなどの回答があったら、経営資料を出してもらいましょう。
経営数字を読み込んで、ボーナスを出せる余地があるのかないのか、組合としても検討してしっかり交渉をしましょう。
今月7月21日(土曜日)の組合交流会は、経営資料の読み方をやります。組合のスキルをアップさせて、ボーナスUPに繋がる交渉をしていきましょう。




posted by 朝倉れい子 at 15:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 労働条件

2018年06月15日

健康で働き続けるために。ダブルワーク、トリプルワークに潜む危険。

昨日、組合員の方のお通夜がありました。私よりまだ若い、まだまだ人生これからの人の死亡でした。
高校生のお子さんが、喪主でした。
さぞかし心残りだっだだろうと、胸が一杯になります。

このかた、組合員なんですが、実は私は面識がありません。
それは、仕事からの帰り道で脳梗塞で倒れられて、意識不明になってから、息子さんとお母様が代理で組合に相談され、加入したからでした。
というのも、ダブルワークをされていて、社会保険未加入だったからでした。
相談をされて、労働時間を調べたところ基本の勤務先で社会保険に加入でき、傷病手当金の受給をすることはできました。しかし、もう一箇所の勤務先での労働時間が全くわからない。そもそも、もう一箇所で働いていたことを息子さんとお母さんは知っていたけれど、それがどこなのかは雲をつかむようでわからない。
脳梗塞という病名は、過労死や脳心臓疾患の労災対象の病名です。仮に、長時間労働であれば労災の対象にすぐになります。けれどもダブルワークだと、一箇所の労働時間だけではどうしても長時間労働ではないわけです。

結局原因がわからないまま、倒れられてからずっと意識が回復しないまま、お亡くなりになってしまいました。
こういうことがあると、本当に考えさせられてしまいます。
「仕方がない」「生活ができない」そんな事情や、周りから「好きでやっているじゃないの」という視線の中でのダブル、トリプルワーク。これでいいのかと。

ここ数年、とりわけ昨年、1昨年くらいから。ダブルで働いています。トリプルで働いていますという相談者の方が増えています。私たちの組合も昨年、この流れに合わせて、ダブルやトリプルの働き方に合わせた組合費の徴収や対応を整理しました。一箇所だけで働いていても問題は発生しまう。ましてやそれがダブルとなれば、問題は倍増です。ダブルで働いている実態があるのに、そこに手をつけないで見過ごすことはできないという現実的対応です。

だけど、やっぱり、出来るだけ一箇所の勤務で生活ができる賃金を得ることを追求するのが組合活動の基本にしないと、本当にみんな生活に追われて、「過労死」なのに「過労死」と気がついてもらえない病気になる可能性が、ダブルワーク、トリプルワークの行き着く先に潜んでいます。「一箇所で生活ができる賃金を得る」このために近道なのは、やはりメーンの勤務先で労働組合を結成し、会社と交渉すること。次に権利について熟知して、社会保険加入、割増賃金をしっかりと請求することです。
「生活できないからもう一つ働き先を増やす」その前に、請求していない権利はないか、未払い賃金はないか、是非点検してみてください。自分の人生と家族の幸せのためにも。
posted by 朝倉れい子 at 22:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 労働条件