2019年03月06日

「雇用類似の働き方」のセーフティネットに「下請法」「建設業法」はどこまで使えるのか

日本には現在1000万人あまりのフリーランスがいると言われており、それは国内労働力人口の約6分の1(フリーランス白書2018より)です。フリーランス、言い換えれば「個人事業主」「個人請負」「個人委託業者」として働いている人たちです。
経済産業省が言うところの「雇用関係によらない働き方」であり、厚生労働省の言うところの「雇用類似の働き方」をしている人たちです。政府が推進している「柔軟な働き方」の一つでもあります。

労働組合的観点から言うと、このフリーランス、柔軟な働き方をしている人たちの多くの実態を掘り下げていくと、実態状の労働基準法上の労働者であったり、労働組合法上の労働者であったりする事になります。

私たちの組合でも「契約上は労働者でない」方たちが増え、労働委員会などで争っています。
「雇用類似の働き方」をさせる事で「社会保険に加入しなくてもいい」「労働保険に加入しなくてもいい」「解雇責任を問われない」「労働基準法を守らなくてもいい」と言ううまみに味をしめた経営者が、実態上の労働者であることを認めたくないので争いになっています。

会社が「労働者でない」と言い張るのに対し、では「下請法」はちゃんと守っているかどうかを確認すると、これもまた守っていないのが実態です。つまり、対等な会社同士の商取引をせずに、「雇用類似の働き方」をさせて、支配下に置くと言うやり方をしているのです。

このやり方に対し、私たち組合は労働基準監督署、労働委員会という労働法分野においての声を今まで上げてきました。

そして、今回、逆アプローチで、「下請法違反の事実」を浮かび上がらせようと考えました。
今回、まず最初に手をつけようとしているのは株式会社キツタカの違反問題です。株式会社キツタカは賃貸借不動産物件の畳襖のリフォームをしています。内装業の建設業です。建設業としての東京都許認可番号を持っています。

違反事項を記載した申告書、証拠書類を揃え終わったので、昨日建設業法の監督官庁である国土交通省に電話を入れました。すると東京都の許認可番号があるので東京都建設局に行くようにと言われ、担当部署と電話番号を教えてくれました。東京都建設局の担当部署に電話を入れてアポどりをしましたが、これが結構手間取りました。

思うに、慣れていない??
労働基準監督署や労働委員会みたいに、アポなしで窓口に行って相談する体制ができていないと言うことのようなのです。
建設業法には、社会保険に加入できる請負賃でなければならないとか、著しく安い請負賃はダメだとか、書いてあります。建設業における請負のガイドラインでは、下請けのために親会社を指導してくれると言う箇所がたくさんあります。
内装も含めると、建設業に働く下請けさんはたくさんいるはずなのに、活用されていないとしたらとても残念なことです。

ただ、結論から言うと3月12日にアポイントを取ることが出来ました。

政府が「柔軟な働き方」をセーフティネットなく進めている中で、経済産業省管轄下の公正取引委員会による「下請法」、建築業における「建設業法」がどこまで請負さんを保護しているのかを確認していきたいと思います。

「請負」「委託」と言う契約名称で、親会社の都合よく働かせ、都合よく切り捨てる事にしっかりとNOと言うために、使えるものは全部使って、闘っていくしかありません。
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2019年03月04日

1990年の賃金水準は今や高賃金?

先週金曜日に、「最低賃金1500円に!」という学習会を開催しました。講師には、にいがた青年ユニオンの山崎さんをおよびしました。山崎さんは40歳前後の方です。
山崎さんが用意していただたレジュメに「クレヨンしんちゃんパパはセレブ?」という項目がありました。クレヨンしんちゃんパパの設定は「30代で専業主婦の妻がいて、子供が二人いて、車を持っていて、ローンで持ち家で、年収600万(年2回ボーナス)。」というもの。山崎さんの年代から見ると、この年収や家族構成は「セレブ」。今の30代や40代前半はもっと貧しい層がたくさんいて、これだけの年収を得られる人はごくわずかのエリート。
 でも、山崎さんよりもだいぶ年が上の私には、どうしてそういう設定なのかわかります。その設定は1980年代後半から1990年のバブル期からバブルがはじけたばかりの時代の平均的なサラリーマン家庭なんです。派遣法は成立したけれど、ほとんどの労働者が正社員だった時代。正社員のお給料が年功序列だった時代。ボーナスが当たり前にあって、退職金が当たり前にあった時代。労働組合が春闘を当たり前にやっていた時代。労働基準法ギリギリとか、最低賃金ギリギリとかがブラックな会社だった時代。
 1980年代の標準は、2020年にさしかかろうという今、セレブ。
 いやはや、なんでこんなに労働者の賃金は値崩れしてしまったんでしょう。

翌日の土曜日、青伸グループ分会という2000年に結成された分会の団体交渉がありました。
会社側の提案する新賃金体系とこの間の諸問題を一気解決するための、賃金組み立て交渉がメーンです。
会社側案に対する組合案を出して、今後さらに詰めることになりました。
交渉の流れは悪くないのですが、その時に、会社役員が一言言いました。
「他の従業員に比べて組合員のAさんとBさんだけが突出して賃金が高い」。それは逆にいうと、他の人が「安い」。
 この理由を私たち組合員は本当によく知っています。
 なぜかというと、組合を結成した2000年頃から運転労働者の賃金値崩れが社会的に発生したからです。組合はただ、定期昇給年500円を早々に妥結し、協定書化しただけです。つまり、現在「賃金が高い」と言われているAさんもBさんも2000年当時の賃金に500円×19年分が上積みされているだけなのですが、相対的にたの運転手さんの賃金が値崩れしたために「高い」と言われる結果になったに過ぎないのです。
 組合員のAさんとBさんの賃金が値崩れしなかったのは、組合に入って会社と交渉し、賃下げ提案を断ってきたからだけの事です。たまに労働委員会をやったり、たまに組合旗を出したりはしていますが、大きな争議や賃上げ闘争をしていなくてもこの結果。労働組合組合員で居続けた成果です。

私は、この役員の言葉を聞いた時、昨夜の「なんでこんな時代になってしまったのか」という疑問の謎が解けました。「労働組合の力」を労働者が使わなくなったからです。
労働組合に入っているだけで値崩れは防げるのに、入っていいなかったから、入らなかったからこんな時代になってしまっています。
今からでも遅くありません。労働組合に入って、値崩れ前の賃金水準、雇用不安のない雇われかた、そこにディンセントワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の付加価値をつけて、良い時代を作っていきましょう。


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2019年01月10日

嘘つき社会を変えるのは、働くみんなの力 ー勤労統計改ざんの労災保険休業補償に対する影響ー

あけましておめでとうございます。
 と言っても、年初めから権力者や国の嘘が続いてちっともおめでたくありません。私たち労働組合は、経営側の嘘に対して、「管轄省庁に訴える」ことで解決の糸口を探すことがあります。また、昨今の経営者や経営側弁護士の嘘の連発に首をひねり続けることもあります。経営者の中に「嘘をついても、騙し続けたほうが勝ち」という認識が流行っているのかと思ったら、政府官公庁にも「嘘つき」の病は蔓延しているのですね。
 とりわけ、本日報道された厚生労働省の勤労統計の15年に渡る改ざんは、データー改変ソフトまで作成していたという、計画的な「嘘」です。もはや犯罪レベルだと思うのですが、なんだってこんな国になってしまったんでしょうね。
 まず、セーフティネット利用者に対して軽く扱っていることに対する疑義が湧きます。労災給付や失業給付はセーフティネットです。職を失ったり、病気になったりしたときに、安心して次の仕事を探し、病気を治すために必要な保障です。そこには、雇用主の不法行為によって失職した時や病気になった時も含まれます。
 だからこそ、労働災害保険法施工規則第9条(給付基礎日額の特例)では四項で「前三号に定めるほか、平均賃金に相当する額を給付基礎日額とすることが適当でないと認められる場合には、厚生労働省労働基準局長が定める基準に従つて算定する額とする。」とされ、五項で「平均賃金に相当する額又は前各号に定めるところによつて算定された額(以下この号において「平均賃金相当額」という。)が四千百八十円(当該額が次項及び第三項の規定により変更されたときは、当該変更された額。以下「自動変更対象額」という。)に満たない場合には、自動変更対象額とする」と「自動変更対象額」が定められています。さらに、第2項で「厚生労働大臣は、年度(四月一日から翌年三月三十一日までをいう。以下同じ。)の平均給与額(厚生労働省において作成する毎月勤労統計(次条及び第九条の五において「毎月勤労統計」という。)における労働者一人当たりの毎月きまつて支給する給与の額(第九条の五において「平均定期給与額」という。)の四月分から翌年三月分までの各月分の合計額を十二で除して得た額をいう。以下この項において同じ。)が平成六年四月一日から始まる年度(この項及び次項の規定により自動変更対象額が変更されたときは、直近の当該変更がされた年度の前年度)の平均給与額を超え、又は下るに至つた場合においては、その上昇し、又は低下した比率に応じて、その翌年度の八月一日以後の自動変更対象額を変更しなければならない。」と定めているのです。

 どういうことかというと、通常は労災保険休業給付は、労災に罹病する3ヶ月前の平均賃金から算定されます。でも、平均賃金が計算できない場合、その金額が著しく安い場合、休業が長期に渡ると罹病前の平均賃金がその後の賃上げや賃下げとズレてくることがあります。それで、今回改ざんが明らかになった「毎月勤労統計」の平均給与額が給付に影響してくるのです。

 実際に、私が担当した事件では、雇用契約書の締結されていないアルバイトとして働いて2日目の職場が火災となり毛髪が全て焼けるような重度の火傷を負った労働者のケースでは、平均賃金が計算できませんでした。そのため、最初はこの法律で書かれているところの4180円の日額計算でしたが、その後自動変更対象額の変更で上積みされました。3年ほど受給していたケースでしたが、途中からの増額でなんとか一息つけた感じで、すごく喜んでいたのを今でも覚えています。

「毎月勤労統計」による金額の変動は、大変な状況にいる人ほど直接の影響が多きいものです。労働基準法、労働基準法施工規則、労働安全衛生法などを紐解いていくと、「厚生労働大臣が定める」と記載された金額の多いこと。

 数字の後ろに存在する多くの生活を考えたら、こんな改ざんは到底できようものではありません。
権力のある国、政府機関、経営者・・。「嘘をついて」も嘘をつき得にさせないため、こんな社会を変えましょう!
posted by 朝倉れい子 at 15:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2018年12月06日

利用者の人権を守る為に、労働者の人権を尊重しよう

今日は日野市にある寿優和会という特別養護老人ホームを経営している社会福祉法人との団体交渉でした。ワーカーさんで働いているYさんが本意でない「退職届」に署名させられ、退職に追い込まれようとしている事件です。そして、「退職届を書かないと今日は帰らせない」「配置転換か退職かどちらかを選ばないといけない」「配置転換しても針のむしろ」「配置転換を断ると懲戒解雇になる」「懲戒解雇よりも自己都合退職がまし」と脅され、騙されて、退職届に署名させられた事件です。この時、「東京都」「日野市」から「求められて」いると施設長が言ったということでした。

ところが、本日の団体交渉では、法人側は「退職届を書けとは言っていない」と言いました。それならば、Yさんは働き続けたいのだから、退職届は「無かった」ことにして、勤務継続させれば良いのではないかと提案しました。しかし、法人側は退職は撤回できないと言いはります。

また、Yさんが書いた退職届に、Yさんは退職日を記載していません。
にも関わらず、法人は12月15日を退職日だとして強行しようとしています。
このことについて、退職日を決めていない退職届をもとに、12月15日を退職日としているのは解雇に他ならないと伝えると、なぜか、法人側代理人は「退職日が書いていない退職届でも12月15日退職で有効だ」と言いました。その理由を求めるとそれは「今は言えない」・・・・・。
なんなんでしょう!!

そして、団体交渉に必要な資料の提出回答も12月20日だと法人側は言います。
資料の提出を受けないまま、このままでは解雇が強行されてしまいそうです。

この法人のホームページの冒頭は「人権と個性を尊重し」と大きな文字が書いてあります。
利用者さんに向けられた言葉かもしれません。
けれども、従業員の人権を尊重しないことには、利用者さんの人権が尊重される介護が出来ようがありません。
退職の意思表示を尊重するというのは、働く現場における労働者の人権尊重の基本です。
退職する意思が無い労働者を、脅したり騙したりして退職届を出させ、民法に基づき意思表示の撤回の意思表示を労働者がしても、一旦手にした退職を強行することは、解雇よりも悪質な人権侵害です。
ぜひ、人権を大切にする社会福祉法人で、このような人権侵害を1日も早く無くしてほしいものだと思います。

私も含め、働くことと、両親家族の介護は繋がっていること。労働者が人権を侵害されている福祉現場がとても心配です。

posted by 朝倉れい子 at 14:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2018年12月04日

奥井組中労委和解しました

IMG_0015.jpg 本日、12月4日、中央労働委員会で係争していた奥井組事件が無事和解にこぎつけました。
そして、分会の和解はどこでもそうですけれど、終わりでなく始まりです。誠実な団体交渉の始まり、次のステップに進む始まり。新たな労使関係の始まり。様々な確執を超えて、良い関係を築けるようになっていきたいものです。

 この事件は、ホント、長かったです。
 2010年夏に分会を結成し、事故の連帯責任の廃止から始まり未払い残業代請求から差別のない賃金体系作りと進んで行ったのですが、2012年に2回目のデジタルタコメーターの改ざん問題が発生します。そのおり、和解のチャンスも訪れたのですが様々あって、2012年秋には労働委員会提訴と訴訟提訴となりました。
 訴訟は未払い残業代+同意のない賃金体系強制適用の差額支払い訴訟でした。これも色々ありましたが、2017年12月に無事和解解決し、納得のいく金額を支払ってもらうことができました。この訴訟解決が一山を超えた感でした。さらっと書いてしまうとこんな感じなのですが、詳しく書くと、もっと一般化されるような話です。

 そもそも、未払い残業代の発生は歩合給を支払っているから残業代の支払いが必要がないと会社が思い込んでいたことから始まりました。この近隣の会社では、同じような例が散見していましたから、近隣で同じようなレクチャーを受けて、でも法的には問題のあるやり方になっていたのでしょう。
 大型特殊車両の長距離運転手さんたちなので、日をまたいだ労働、長時間の荷待ち待機、長時間の荷積み、運行許可時間までの待機などが組み合わされ、会社に出勤してから、会社に戻るまで2週間もあったりして、労働時間管理は簡単でないことがわかりました。労働基準法的に整理すると同時に、労使間で話し合って労働時間と待機時間、休憩時間について整理していく必要のある労働実態です。
 会社に理解してもらうために長い時間を要しましたが、労働基準監督署の勧告もあり、2012年冬には賃金体系が変更になりました。この時、会社と組合は2013年2月までに賃金体系に合意するために事務折衝を重ね平等性のある賃金体系を作成しようという約束をしました。ところが、会社の事務折衝の担当者が言うことがなかなか確定しないなどの問題で2013年の夏がすぎ、秋が過ぎても新しい賃金体系が作れない中、会社が約束を反故にして非組合員らに残業代を支払って人件費が突出したので平等性のある賃金体系は作れない、と言い出しました。これは都労委で係争中に起きたことでしたが、追加申立を行い、不当労働行為であると認定され、2016年夏に東京都労働委員会から救済命令が出されました。

 都労委の救済命令が出された時、流石に会社も遵守するのではないかと思いました。しかし、会社は中労委に上告しそれから2年です。労使関係は生き物なので、申立時点で問題になっていた事のうち今でも継続していること、新しく発生したことが、都労委申立てから5年、都労委命令から2年、訴訟和解から1年の月日の中で変わってきています。そして、今まで5年間は労働委員会の期日が絶えずありましたから、期日のたびに労働委員会がこれ以上の労使紛争が拡大しないように、様々なアドバイスを出してくれていました。最初は、確か、団体交渉議事録確認についての調整でした。それまで団体交渉で言った言わないを巡って3回期日6時間ほど争いが続いていたのですが、労働委員会の中立でお互いの言い分記載して取り交わすことになりました。その後もことあるごとに労働委員会の方々にはお世話になってきました。

こんな経過の中で今回ようやく、和解です。和解勧告の内容は「当たり前」の事ばかりです。これに付け加え、公益委員から「日報改ざん、配車差別を含む差別などの組合が疑義に思っていることを会社は受け止めて対処するように」と言う一言が加えられ、後日「調書」として双方に送達されることになりました。

当該もこれを受けて、早速団体交渉申し入れを会社に行うと言っていました。

職場分会の和解はいつも終わりの始まりです。協定書を作成しても、ちゃんと会社が守ってくれないとまた、係争勃発します。それでもやっぱり、奥井組であれば分会結成の2010年の頃よりも法令を守る会社になってはいます。
次の団体交渉が楽しみです。
 

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2018年10月22日

八王子労働基準監督署にて

今日は、畳襖などの(株)キツタカの偽装請負問題で八王子労働基準監督署に行きました。申告した2月から延々と続いてます。この事件、申告時点で「請負」契約だからと最低賃金以下の労働を強いられていたのですが、なかなかキツタカへの指導が及びません。このため2月から10月にかけて、会社側は「請負」契約を幸いに、業務量を勝手に減少させたので、組合員らは兵糧攻めです。生活苦を抱えながら、「請負」契約という名前ではなく、実態で労働者性を判断してもらうために監督署を説得しなければなりません。困難ではありますが、今組合は半年以上かけて監督官に実態を理解してもらうための作業と交渉を続けています。もし、労働者が一人でこの作業をするとなったら、並大抵ではないはずです。国の役所で権力がある労働基準監督署が、弱い者の立場に立ってくれれば、こんな苦労をしなくても良いのですが。とっても残念なこの現状の中で、私たちは頑張っています。

実は、今日も、事前アポイントの様子を当該から聞き及び、ちょっとみんな憤慨していました。そんな気持ちを抱えたまま、監督官と話している時、私たちの後ろで別の人が別の監督官に怒りをぶつけていました。聞くともなく耳に入ってきた言葉は、「監督署に何度も訴えたのに、監督署が動いてくれなかったからこんな結果になってしまった」「会社が潰れたらどうするか、と言われても、こんな会社なら潰れたほうがいい」「この結果は監督署の責任だから、私は監督署相手に訴訟することも考えている」などなど。どうも私たち以上に監督署が仕事してくれずに、怒り心頭の様子。

そうだよなあ、と思いました。私たちは組合という組織を作って、監督署や会社からひどい対応があればその怒りを皆で共有し、対策を考えて、必要に応じて顧問弁護士とも相談して、関係する議員さんたちとも相談して、歩みを進めています。でも、お一人で、理不尽な事態に対応せざるを得ないときは、本当に辛いだろう思います。

労働局、労働基準監督署、こんな大事なお役所が労働者の立場に立って動いてもらうためには、やっぱり地域の労働組合の役割がとても大事です。それは、組合が様々な事案を持ち込み、解釈や対応についてきちんと監視するという役割も労働組合は担っていると思うからです。
世間では、たまに、「労働組合なんてあてにならない」という声がありますが、労働基準監督署交渉でも、訴訟でも、労働組合が果たす役割がきちんと存在します。一人で、交渉の行き詰まりを感じたら、思い切って地域の労働組合の相談窓口を尋ねて見ませんか?


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2018年10月02日

10月1日から最低賃金が上がりました。全国一律1500円に到達するのは何時?最賃からこぼれ落ちる「労働者」には??

 東京では10月1日から最低賃金が985円になります。東京23区内では、最低賃金で求人募集を出してもあまり来ないようでが、同じ東京でも23区外の三多摩地域では最低賃金に従業員の賃金を設定している会社がまだまた多いのが現状です。そして、多摩地域は東京なので985円ですが、隣の埼玉では最低賃金は10月1日に上がったといっても898円。県境をまたぐだけで、1時間87円も違います。私たちの加入組合は主に三多摩地域で働く人たちですが、三多摩と埼玉は隣り合わせなので埼玉に働く人たちも少なからずいます。そして、埼玉、東京にまたがって営業を展開している会社で結成されている組合もあります。県をまたいで、店舗、工場を展開している会社では、同じ仕事をしていても埼玉で働いているというだけで、1時間87円も安くなります。県が違うだけで賃金は1日8時間で日給が696円安くなります。私たちの組合に加入している白百合分会が働く白百合クリーニングでは、東京と埼玉で展開されています。こちらの店舗では、「通し」勤務は11時間なので、(87円×8時間)+((87円×1.25)×3時間)=696円+326.25=1023円も1日あたり安いという計算です。
 ところが、最低賃金が安いからといって、価格設定が東京と埼玉で違うということはありません。生活にかかる費用も、東京と埼玉で大きく変わるわけでもありません。一人の問題から地域の労働条件水準の向上までが三多摩労働組合のお仕事です。
賃金、労働条件の企業間格差、地域間格差はどうにかならないものかと常々思うところです。さらに、最近増えている「個人事業主」扱い、フリーランス、などでは、実体上企業に生計を左右されているにもかかわらず、最低賃金の枠外に置かれている現状も、本当、どうにかしなければなりません。
そんな事を考え、you tube を作成してみました。是非、ご覧になってください。
posted by 朝倉れい子 at 19:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 労働組合活動

2018年09月15日

一人でも組合に入れば、労働条件改善を目指して団体交渉できます

今週は個人加入の方達の団体交渉がいくつかありました。個人で加入される方の問題は様々。それでも、類型的に整理していいくと傾向が見えてきます。
最近の私たちの組合では解雇問題は本当に少なくなりました。
解雇事件というもの、景気が悪くなると目に見えて増えます。それも、本人責任の無い経営危機を理由とした解雇、人件費削減のためだけの解雇です。そのような解雇は比較的早期解決を狙えます。反対に景気が良くなると、社風に合わない、協調性が無い、などの解雇が増えます。そんな事件は、ボタンのかけ違い、気持ちの行違いが多いので長期化することもよくあります。
ただ、解雇事件だと、事件が終わると組合からも卒業される方も多く、寂しい限りです。
そんなことを考えると、最近、解雇よりも職場の問題改善の為に会社と交渉される方が多いのは、とっても良い傾向だと思います。解雇という最終事態になる前に、組合に相談して、一つづつ解決していく事が、一人でも安心して働き続けられる職場づくりに繋がります。
9月になってからの個人加入組合員の団体交渉議題はこんな感じでした。
Dir社 配転問題・一時金・昇給・未払い残業代・パワハラ
Mr社 一時金・有給休暇取得後の手当減額
Mt社 労働者性のある労働者の個人事業主問題・未払い残業代

今後予定され団体交渉もこんな感じです。
E社 就業規則変更と不利益変更問題
T大 パワハラ・アカハラ
Mクリニック パワハラ・残業代未払い
Diw 社 一時金

他にも色々とありますが、残業代未払いとパワハラが多い気がします。
それでも、個人組合の人たちの集まる会議でお互いに知り合い、助け合っています。
パソコンが苦手な人は、パソコンが得意な人の手を借りて残業代の計算を終え、お互いの団体交渉に行きあい、一人で加入しても組合の中で助け合える仲間を見つけているようです。
組合で交渉を始めた当時は、心の病で「会社に行かれない」「もう退職する」と泣いていた彼女が今では、団体交渉で会社側を詰めまくること詰めまくることで、「今が一番居心地がいい」と言うようになったりしています。

「ブラック企業に働いているけれど、皆、諦めてしまって仲間がいない。」とお悩みの方、勇気を出して一人で一歩を踏み出して見ませんか?

posted by 朝倉れい子 at 14:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 団体交渉

2018年08月29日

介護も一人で背負わないでくださいね

先日、ある分会の臨時大会を開催しました。女性の多い職場で、皆さん介護が大変と訴えます。ある程度年齢を重ねてくると、親も高齢化します。子育てをしながら働き続けられる職場と、介護をしながら働き続けられる職場づくりは、労働組合の大切な課題です。
 今は小康状態ですが、私自身ちょっと大変で、でも振り返ると愛しい介護の時期がつい最近ありました。
 私が仕事と介護を両立できたのは、組合という仕事の中で理解してもらえたり、融通を効かせることが出来たからです。そして、両立できたから、振り返ると「楽しかったかも」とすら思えるのですが、これが仕事を退職せざるを得ないとか、職場で針の筵になったりしたら、介護は辛く恨めしいものになるかもしれません。
 当たり前のことですが、職場の人たちの協力と、誰から辛くならないための職場環境づくりのための経営者との交渉が、当たり前の人の営みである介護を普通に行うためには欠かせません。本当に当たり前のことなんですが、「余裕」があってこそ、人に優しくなれるのが人間です。その「余裕」を組合がどのように作り出すことが出来るのか、正念場です。

私の実家の事情はこんな感じでした。
 父大正12年生まれ95歳。母昭和4年生まれ89歳。10年ほど前、父が階段から落ちて首の骨を折り、母も静脈瘤手術を繰り返す、最初の介護がありました。この時に母は障害者手帳を持つようになりました。その後はなだらかにボチボチ老いていくのだろうと思っていました。
病気は突然。
 今年2018年の1月のお正月も、年取ってきたなあって感じで過ごしました。ところが、1月17日に事務所で作業をしていると父から電話で「お母さんが救急車で入院した」と言います。姉に確認すると母は「もう死んだ方いい」と言って、苦しんでいるということ。ちょっと事態が理解できずにぼーっとしました。が、一緒に作業をしていたMちゃんから「すぐに帰って!」と言われ他ので、病院に駆けつけることが出来ました。
 様々なチューブに繋がれた母は肺水腫のために浮腫がひどく、集中治療室です。面会時間19時に間に合うように、連日仕事を速攻で終えて、猛ダッシュで横浜の病院へ!でも、通わなければ後で後悔するのが本当に怖かったです。
夕飯食べに実家に帰ろう。
 ふと気がつくと、元気のはずの父親の様子がおかしい。尋ねると「お母さんが入院してから一人でご飯食べている。会話が無い。」と言います。
 父がボケないために、姉が夕飯を作り、父と私が一緒に食べる(姉は一緒には食べない)事に。気がつくと姉も一緒に食卓を囲むようになり、何十年かぶりの家族の会話が復活していました。
いきなり失語症。
 肺水腫で入院した母の容態はどんどんと回復に向かい、2月中旬には退院できるということにまでなりました。素晴らしい生命力!なのですが、母の声が言葉にならない。あー、うー、という音にしかならない。看護師さんに言うと「もともとそう言う(つまりボケている)人なんじゃないですか」と言う。いえいえ、もともとよく喋る人で、新聞も本も読んでたし、ちょっと天然で薄らボケはあるかもしれないけど、完全にはボケてないです。姉も一緒に主治医の先生に訴え、やっと「検査しましょう」と言うことになりました。検査の結果は、「脳梗塞を発症し、失語症になった」というものでした。何も言わなかったら、「もともとボケている人」「もともと話せない人」扱いになって、脳梗塞を起こしているのに検査も治療もしてもらえなかったんだろうとしか思えません。
家族がしっかり伝えることも介護のうち
 結局母は、入院中に2回脳梗塞を起こし、一旦よくなりかけた失語症が悪化を繰り返しました。ただ、失語症は、言葉が出ないだけで他は正常です。トイレに歩いて行くことも出来るし、周りを気遣うことも出来る。内臓は丈夫です。歯も丈夫です。でも、危ないからと言う理由で、病院では一人でトイレに行かせてもらえない。食事はなぜか、全て形のない裏ごしをしたものばかり。こんな食事ばかりしてたら体が弱ちゃうんじゃないの?と言うのが私たち姉妹の感想で、姉は再三に渡り、普通食に変えて欲しいとナースステーションに訴え、ようやく改善されました。
 その後3月末に言語療法士の先生のいるリハビリ施設に移ると、どんどん言葉が出るようになって来ました。リハビリの成果、素晴らしいです。6月3日には無事に自宅に戻りました。
介護はきっと最後の、もう一度家族をすることかもしれない
 激動の半年間でしたが、いろんな事が使用前使用後のように形を変えました。
 母は食事づくりをしなくなりました。母は家事から解放され、姉と喧嘩しなくなりました。
 そして母はケアプランを立ててもらい、デイサービスに通うようになり、「お友達ができたの」と言っています。リハビリ施設入所中の向かいのベットの人とは、文通友達になったようです。
 父も母と一緒にサービスを利用するために介護認定を受けたところ、要支援1で元気なことがわかりました。
 今回の介護まで、両親と一緒に食事をする事がなかった姉が、食事の準備をして一緒に食卓につくようになりました。
一人で悩まず、相談してくださいね
 少しずつ、形を変えて、私たちは年老いて行くけれど、その時々、その時間は全て愛しい大切な時間です。また何かあったら、バタバタするかもしれませんが、私たちはendマークに向かいながら今を生きて、今の問題に対処し続けてくものだから、組合も介護も、私はきっと出来るから、安心してくださいね。
 そして、組合の人たちにも、後悔しないで介護も仕事も組合もしてもらいたいから、個人的な事、などにしないで、「余裕」が無くなりそうになったら、いつでも相談にきてもらいたいと、心から思います。
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2018年07月24日

仕事中に熱中症!それって労働災害です。

 労働者は「災害」的暑さの中でも、働いています。屋外でも、エアコンの無い現場でも、環境に問題のある工場でも、働いています。
 暑いですねーー。気象庁がこの暑さを「災害」と認定しました。世界気象機関は「温室効果ガスの増加による長期的な地球温暖化の傾向と関係がある」と分析しているようですから、突発的な自然災害とばかりいえない人災かもしれませんが、とにかく殺人的な暑さであること、そしてこれは続きそうなことだと言うことが確かなことです。今年の熱中症の死亡者数は昨日までで94人だそうです。本当に危ない。

 高齢者や子供が熱中症で搬送されたと言うニュースも多いですが、昨年まででも、熱中症の死傷で労働災害と認定された人数はちょっと半端な数字では有りません。厚生省労働省の調査をみると、昨年平成29年が528人、平成28年が462人、平成27年が464人、それぞれ二桁の死亡者がいます。労使共に労災の概念が薄くて労災扱いになっていないなんて、ケースもあるかもしれませんから、仕事中に労働災害としての熱中症になった方はきっともっといると思います。
 仕事中に頭がクラクラしたり、熱中症の症状が出たら、直ちに仕事を中断して横なったり、救急車を呼んだりしましょう。そして、すぐに労働災害の手続きをしましょう。もし労災保険に加入していなくても、会社が労災扱いを拒んでも、直接労働基準監督署に手続きを取れば、大丈夫です。不安があるときは、いつでも労働組合に相談 http://zsantama.org/form.html してくださいね。

熱中症の労働災害判例では、裁判所は次のように言っています。「労基法施行規則三五条、別表第一の二第二号八は、「暑熱な場所における業務による熱中症」を業務上の疾病としているのであるから、労働者が暑熱な場所における業務に従事中、熱中症を発症して死亡したと認められる場合には、特段の反証がない限り、当該疾病は業務に起因するものと認めるのが相当である。」(平成16行(ウ)33事件、労働判例923号54頁)
自信を持って、労災認定申請をしましょう。労災で休業補償を受けて、ゆっくりと休養しましょう。熱中症になったのに、お金が心配だったり、会社が休ませてくれなかったりして、休養を取らずに働いたら、体が休まらずに悪循環になってしまいますからね。

 そして、熱中症予防は、様々な方策で防ぐための職場の環境づくりが必要です。厚生労働省もこんなリーフレットを出しています。https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/leaflet_11.pdf
要点をまとめると、@輻射熱も含めた暑さ指数の測定をしっかりして、Aとっても暑い時は作業を中断B休憩時間を確保する作業計画C暑さ指数が基準値を超えるおそれのある作業場所に簡易な屋根の設置、通風又は冷房設 備の設置、ミストシャワー等による散水設備の設置D作業場所の近くに冷房を備えた横になって休むことのできる休憩場所の確保。E透湿性及び通気性の良い身体を冷却する服、通気性の良い帽子、ヘルメッ ト。ということです。

中小企業では、休憩室がきちんと完備していないところ、温度管理ができていないところがたくさんあります。とても暑い中で、交渉も大変ですが、何よりも大事な健康管理のために、会社に安全配慮義務を果たしてもらいましょう。
posted by 朝倉れい子 at 18:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 労働条件